存続危機のまえとあと

遠藤さちえ
湘南ベルマーレ 広報

湘南ベルマーレの遠藤さちえさんは、サポーターの皆さんからも愛されるクラブの広報だ。今回のコロナ禍のなかどんなことを考えていたのか、そして乗り越えるために参考になったことが何だったのかを伺っていると、1999年の経験が大いに彼女の今を支える糧になっていることを知った。それが存続危機の「まえとあと」。(2021/8/16 追記)

Profile

遠藤さちえ
1996年にベルマーレ平塚(現・湘南ベルマーレ)入社。入社当初は外国人選手の生活面や家族のケアを担当。
チームのマネージャーを経験したのち広報担当に。2016年より3年間スポンサー営業を担当し2019年より再び広報に。
メディア対応や発信全般を担当。
http://www.bellmare.co.jp/

Index

ベルマーレの存続危機

遠藤

ベルマーレ存続危機の前と後は大きく違いますね。本当にクラブの理念のもとでやっていくんだって覚悟ができたのも、存続危機の後でした。そこは一番私自身も変わったところです。1999年にベルマーレが存続危機になったとき、ベルマーレ平塚から湘南ベルマーレになったときはだいぶ違いました。

そこを経験すると、心持ちはだいぶ変わるものですか?

遠藤

もう何もかも見える景色も含め、全部変わりました。ベルマーレがなくなってしまうかもしれない危機的状況で、すごく大切なターニングポイントでした。社会的にもすごく大きなこととして取り上げられましたし、当事者である私たちも、本当に寝ても覚めても、どうにかしなければいけないと、ずっと動き回り考える日々でした。

私は入社してまだ間もない20歳そこそこでしたが、その危機的状況がクラブが生まれ変わるチャンスかもしれないと思ったことをすごく覚えています。もちろんそれまでのベルマーレも大好きだったんですが、Jリーグやベルマーレが目指している地域密着や、地域のためにクラブは何が出来ているのかを考えると、本当にそれが出来てるのかって気がすごくして、当時は少し違和感がありました。

もっと地域のために出来ることがあるんじゃないかと、経験が浅いながら疑問視していたところもありました。存続危機のときは本当にいろんな人が苦しい思いで、いろんな大変なことがありました。でもそれ以上にいろんな方に支えていただき、私たちのクラブは地域に支えられ、地域の人たちの想いがあるから存在できてるんだと身をもって知りました。

そこに対しての恩返しというか、きちんと向き合い、地域のためにクラブがしっかり活動することが当然だし、地域に支えられてるんだから、地域の為になるクラブとして活動することが、一緒に地域の人たちとクラブが歩んでいくことを一番体感できた。そして、本当にそうであるべきだと思えたのが、そのときですね。

僕もちょうど今このコロナ禍のタイミングで、一番いろいろ感じましたね。

遠藤

難しい状況のときは、本当に苦しいし辛いですが、その時にしか得られない感情があると思うので、そういうものに向き合うと、自分にとっての学びにもなり、成長できるチャンスだと思います。 

あのときは本当に1年間365日、私だけではなくて、本当にベルマーレを取り巻くすべての人がフル回転で、ベルマーレをなんとかしなきゃいけないって想いで、クラブの中の人も外の支えてくれる皆さんも、足を止めずに走り続けた1年だったので、もうその時苦しかったことが今では思い出せないくらい、充実していた1年でした。

その経験はその後も大なり小なりいろいろなことが起きてると思いますが、活きてますか?

遠藤

活きてますね。1つは乗り越えられた自信。乗り越えるまでにはまたすごく時間もかかってますし、今も別に安定しているわけではないですが、綱渡りの日々を何とかみんなで乗り越えた自信は、大きなものになっています。何といっても地域の皆さんとの絆の部分では、それまではベルマーレは見るだけのチームだったものが、本当に自分のチームだと地域の人や支えてくれるサポーターの皆さんが思ってくれるクラブになったと思うので、絆もものすごく深まったと思いますね。

いまベルマーレがあるのは、クラブとしての歴史や経験として、存続危機があったことは、本当に大きな出来事だと思います。

オンリーワンのクラブでありたい

他のJクラブさんとも交流があったりするんですか?

遠藤

もちろんあります。たとえば広報同士の横のつながりで情報交換をしますし、当然試合で対戦するので、そういう部分では一緒に同じ空間を作り上げていく部分で、横のつながりはすごく重要だと思います。もちろんライバルでもありますけど。

意外と業界のなかで、みんなで横に繋がっているのがすごく面白いと思っていて。

遠藤

そうですよね。私たちも他のクラブから刺激を受けることもたくさんありますし、

ナンバーワンにもなりたいんですけど、でもベルマーレはオンリーワンでありたいと常に思っています。これだけたくさんのJリーグクラブがあって、ましてや神奈川県は本当にたくさんのJクラブがある中で、特徴を持つとか、ベルマーレらしさを前面に出すことによって、それぞれ色があった方が面白いと思います。だから常にチャレンジする姿勢を見せて、オンリーワンのクラブでありたいと思いますね。

ベルマーレ不足、自分たちの存在意義

今っていろんなものが中止になったり、湘南地域だと海水浴場で泳ぐことが中止になったりしているじゃないですか。そういう中でJリーグが再開するのは、街の人にとっても良い知らせですよね。

遠藤

そうですね。そうであることを願っていますが、私たちはサポーターの皆さんと近くにいつも感じられる関係性なんですが、コロナウイルスのことがあってから、なかなか直にお会いすることもできないわけです。選手たちも言ってますが、いつも練習場で練習を見にきてくださって、練習が終わったらファンサービスをしながら話をすることも、ずっと何ヶ月も出来ていない状況です。

選手もすごく残念がっていますし、サポーターの皆さんもSNSを通してですが、「ベルマーレ不足です」って声をたくさん寄せてくださるので、そういう声を聞くと、本当にJリーグが再開されたことは嬉しいことです。最初は無観客になりますが、画面を通して選手たちの躍動する姿を見て頂けるのは、すごく嬉しいですし、選手たちもすごく張り切っています。

傍から見ると無観客でお客さんがいないのは、臨場感に欠けると思うのですが、逆にもう再開しているドイツの試合を見ると、普段聞こえない声などが聞こえるじゃないですか。それはそれで逆に普段の試合の中での雰囲気が分かりますよね。

遠藤

そうですね。たぶんリモートマッチは短期間になると思いますが、そういう意味ではすごく貴重なふだん聞こえない声や、それこそ選手同士の体がぶつかる音、そういうものも聞こえると思うので、それは貴重かもしれないですね。

このコロナの時はいろいろなことを考えたり、自分たちの存在意義を考える意味では、さっきお話しした存続危機のときとすごく似ていて、いま出来ないことがすごく多かったじゃないですか。人と会えないとか仕事がなかなか出来なかったり、外に出れないとか、出来ないことがすごく多い中で、それでも自分たちの存在意義ってなんだろうと選手たちもすごく考えたと思うんですよ。

サッカーが出来ない自分たちは、どういう存在意義があるんだろうって、自分自身を見つめる機会になったと選手たちも話していました。私も同じでいろんなことが出来ない中で一体何が出来るんだろうと考える時間でした。存続危機の時も、お金が本当に足りない、人もいない、とにかく時間もない。その時もないないづくしだったんですけど。でも工夫したんですよね。

お金がないから、こうしてみようとか、人がいないから、外の人に一緒にやってもらえませんか?と仲間になってもったりとか、そういう工夫をしたんです。時代は違うんですが、今回のコロナ禍もいろんな出来ない状態のときだからこそ、人はいろいろ工夫をするし、自分の存在意義を考えて行動を起こそうとする。そういう部分では苦しい数ヶ月でしたけど、マイナスだけじゃなくて、私たちにいろんな気づきをくれたんじゃないかなって気もしています。

本当に「まえとあと」でインタビューをしていると、みんなほぼ似たようなことを言ってくださるんで、それはすごく良い話だなと思って。もちろんこういう時期は怠惰になる瞬間もあるんですが、逆にこういうことがなければ、こうやってオンラインでの取材もしようとは思わなかったと思います。

遠藤

確かに。

リアルの大切さを忘れたくない

やっぱりリアルで聴いた方がいいという気持ちはまだずっとあるんですけど。

遠藤

リアルの大切さもより感じますよね。私もそこは忘れたくないなと思っています。

オンラインで出来るから、オンラインでいいじゃないって世の中になるのは寂しいじゃないですか。やっぱり人と人が face to faceで会い、生み出すものからの面白さって絶対あります。だから、私も広報の立場として、リアルに会うからこその面白さや気づき、そういうものを絶対大事にしたいと思っています。

僕のもしかしたら勝手なイメージかもしれないですが、遠藤さんのやっている仕事はリアルを1番感じる仕事というか、スタジアムの空気感も含めて、選手の雰囲気でも多少何か感じるところがあると思うんです。そういうことを感じる仕事だとすると、オンラインはその空気感がなかなかフィルター1枚で分からないじゃないですか。そこはずっともどかしくて、僕自身はずっとどうにかならないかなって思うところなんですよね。

過去にはいろんなイベントは、ネットで配信したらいい!と思っていたんですが、ただLIVEとかサッカーも含めて、テレビで見ているものやネットで見るものと、現場で感じるものは全然違うので、そこにある壁をどうにか出来たらもっといいんだろうと思っていて。

遠藤

そうですね。私たちもスポーツが持つ人間同士の本気と本気のぶつかり合い、それはもちろん画面を通して伝わるものもあるかも知れないんですけど、でもスポーツ特有のそのリアルな部分、ある意味密な部分、それはすごく価値だと思っています。だからなかなかそういうものが得られない世の中では、もしかしたらスポーツのそういうリアルや密なところは、より価値が上がるのかも知れません。

価値は上がると思うんですよね。

遠藤

そうですね。それを求めていることはあるかな。

制約が出来ると、多少なりともその気づきの部分で、今まで普通だったことができないことに対する渇望が、反動として出ると思うんです。

遠藤

そうですね。そう思います。

どうしてもこの期間に動けない中で、もちろん皆さん家の中でトレーニングもされるんでしょうけど、だから期間を置いて戻していくのも、もちろんアスリートの皆さんは大変だと思います。 それをサポートする遠藤さんたちの役割も大変だと思います。

遠藤

中断していた2ヶ月間、選手たちは自分自身が試されるような期間だったと思います。もちろんクラブからのトレーニングメニューはありましたが、でも+αで何をやるか、自分に全て責任があり、自分が決められる状況だったので、本当に自分が試された二ヶ月間だったんじゃないかと思います。

ほかの取材でも、その期間中で何をやるかで違うって話はあったし、成功体験に頼ろうとするのは止めてもっと試していかないと、全部が全部同じ状況には戻らないし、それはそれで考えないといけないよねって話も出たりしました。

遠藤

そうですね。信念は曲げたくないですが、その状況に柔軟に対応する強さやしなやかさは持ってないと生き抜けない。大事な芯はきちんと持っていたいですが、でも頑なに自分の考えを曲げないわけではなく、対応力が試されていると思うので、しっかり柔軟に対応したいと思っています。

最初の話でもありましたが、1999年のクラブ存続危機の経験がベースにあって、そこからどう展開させるか、ブラッシュアップさせるかなのかは分からないですが、その経験がもし今なければ、逆にもっとどうしようとなった可能性もあるじゃないですか?

遠藤

確かにそうですね。1999年の経験も大きかったですし、その後20年間誰もがそうかもしれないですが、本当にいろんなことがあった20年だったので、そこでいろんな状況を乗り越えてきたところは、クラブとして一つ強みとしてあると思います。

コロナのまえとあと / 竹中功

取材のあと

音声配信アプリ Stand.fmを使って、取材後のインタビューをしています。

※湘南ベルマーレが初めてのクラウドファンディングをはじめたので、お知らせします。

https://readyfor.jp/projects/OneBellmare2020

[New]まえとあとのあと

大げさじゃなくて生きる希望なんだよ

©SHONAN BELLMARE

今日のインタビューは前に取材したときから、ちょうど1年ぐらい経った感じですね。

遠藤

そうですね。

意外と時間が過ぎることが早い感じなんですけど。状況はあんまり変わってないですか?

遠藤

1年前はちょうどJリーグが再開して、無観客での試合を経て制限試合となっていきました。その制限試合がずっと続いている感じですね。だから結果としては変わってないですが、でもこの制限された状態で運営することには慣れてきたので、制限された中でどう会場での一体感を作るかとか、お客さんに楽しんでいただくのかといったことは、この1年間でたくさんの試合数を経験して、毎試合考えているところではありますね。

個人的に感じるのは、クリエイティブ的なことは制限されている方が発揮されやすいことがあると思います。逆に全部自由にやっていいよって言われるとできないじゃないですか。

遠藤

なるほど、たしかに。

だから今のように制限された中では、より工夫しようとなりますよね。

遠藤

そうですね。本当におっしゃる通りで、たとえば予算が潤沢にあったり、何でもしていいような状態だと、逆に難しかったかも知れないし、制限があったりすると考えるので工夫しますよね。そういう意味では、自分たちの力が試されているとも思いますし、制限された中でどうやっていい空間を作り出そうかみたいなことは、前よりも考えるようにはなりましたね。

それに対してベルマーレさんはサポーターとの距離は近いと思うんですけど、制限されたなかでの工夫に対して、サポーターの反応はどうですか?

遠藤

そうですね。ちょうど中断に入ったので試合の写真整理をしてたんですけど、試合の前も含めてサポーターの皆さんがホームゲームの試合以外の部分も含めて楽しんでいただいていることは写真に写る表情などを見ながら感じました。こんなに試合をするにも制限があったり、感染対策のためにいろいろと不便な思いや窮屈な思いをさせてしまっている状態の中でも、サポーターの皆さん笑顔があふれてるんです。皆さんマスクをされているんですけど、きちんとルールを守りながらも、すごく試合を楽しんでくださっているのが写真から伝わってきます。

それはすごく嬉しいですし、いろんなことを制限したり我慢したりする生活の中で、ホームゲームでいろんなサポーターの方とお話ししているときに本当によく言われるのは「ベルマーレのホームゲームの試合があるから楽しめている」とか、このあいだ言われたのは「大げさじゃなくて生きる希望なんだよ」って言っていただきました。

それは本当にありがたく思います。私たちが本来一番目的にしている使命というか、皆さんの生活の中に、ベルマーレがあって良かったとなるのが私たちの目標なので、制限された中でも、少しサポーターの皆さんの楽しみや喜びになっているのであれば嬉しいです。

一番大変なのはメディカルスタッフ

©SHONAN BELLMARE

サッカーの試合でスタジアムに入れる人数は今って5000人ですか?

遠藤

そうですね。

ずっと5000人の上限なんですか?

遠藤

観客がスタジアムの収容人数の50パーセントになった時期もありました。去年の終わりぐらいかな。でもベルマーレはもともとスタジアムの収容人数が少ないので、50パーセントにしても7000人にもいかないんですよ。だからそんなに収容人数は変わらないですね。

もちろんスタジアムのキャパシティが5万のところにとっては大分違うので、50パーセントか5000人かだとだいぶ違います。とはいえ、もちろん1000人でも100人でも増えたほうがいいです。今は5000人がずっと続いていて毎試合チケットも完売にはなってるんですけど。なかなか収益的には厳しいですね。

完売になるのは、コロナ禍の状況なのもあるとは思うんです。

遠藤

なかなか皆さんが難しい状況の中で希望の光になればいいなと思っているし、選手たちもそれを意識しながらプレイしていると思います。この部分はスポーツで仕事をさせてもらっているものとしては意識するところでもあります。

選手の人たちも体調管理や練習も大変ですよね。

遠藤

毎日をだいぶ管理されている中で過ごしているので、それこそ外食はできないですし、クラスターが起きてはいけないので、選手同士で食事に行くことも禁止されています。本来だったらコミュニケーションを取るためにも、みんな一緒にご飯へ行ったりもするんですけど、今はできない状況なんですね。

でもコミュニケーションを取るためにはどうするか考えて、屋外のピッチでの練習のときであれば、話をすることは許されているので、選手たちはピッチの中でしゃべることが増えました。ピッチの中で話すことは意識してやってると思います。練習が終わって屋内に入るとあまり話すことができないので。だから練習中にコミュニケーションを取ることはすごく活発になっている感じはありますね。

下手に外出したりすると外野が騒ぐことが増えてますからね。

遠藤

この我慢の状況が選手たちもずっと続いています。定期的にPCR検査を受けたり、オフに入っても1日おきに抗原検査があります。規制はありますけど、でもそれは今は当然のことなので、何も言わずに選手たちはしっかりとやってます。

確かにサッカーができることが選手は一番だと思います。そこに付随する制約はどうしても避けて通れないし。遠征をするときも大変ですね。

遠藤

そうですね。だから誰が一番大変かと言えばメディカルスタッフではないかと思います。あらゆるところを計算して、これは感染対策的にどうなんだとか、ホテルから移動のバスから何から何まで全部を事前に調べています。その段取りを一年中やってきたので、だいぶ慣れたとは思いますが、マネージャーや特にメディカルスタッフは本当に大変ですね。

もっと把握しておかないといけないってことですもんね。

遠藤

そうですね。選手たちは日々体を使っているので、どうしてもコロナにまったく関係ないところで、熱が出やすかったり体調を崩しやすいことがあります。ちょっと熱が出るとコロナなのか調べたりと気を遣うところですね。

ストレス発散をしたいと思ったことはない

©SHONAN BELLMARE

気分転換はどういったところで図っているんですか?

遠藤

気分転換はしなくても、仕事で毎日グランドに出ていると、日を浴びて芝生の上に立っているだけで、気持ちが晴れやかなんですね。本当かどうかは知らないですが、人は日を浴びたほうがエネルギーが出たり、体にとって良くていいんじゃないかなと思っています。

仕事上、毎日グラウンドに出るんですが、毎日外に出ている環境にいることと、自分が立っている芝生の上で、選手たちが懸命にプレイしている姿を見ているので、すごく刺激的ですし、敢えて休みの日だから気分転換しなきゃとか、ストレス発散しなきゃと思ったことはあまりないですね。

でもそれが一番健全な気がします。僕も今は意識して気分転換を図ることはあんまりないですね。一日の中のどこかで気分転換を図っているというか。逆に家で一人で仕事をやっているからなんですけど。

谷晃生と遠藤航と中田英寿と

©SHONAN BELLMARE

サッカーもまた盛り上がってきて。ちょっとサッカーの代表人気も若干落ちたりしてるかなって気もするんですけど。オリンピックのU-24サッカー代表も期待の持てそうな雰囲気にはなってますよね(オリンピック前に収録しています)

遠藤

そうですね。楽しみな感じにはなってきましたよね。GKの谷晃生選手とうちにアカデミーから所属してトップでも活躍した遠藤航選手がオーバーエイジでメンバー入りしていますので。

遠藤さんから遠藤選手に紹介って感じじゃないですか(笑)。遠藤と名のつくサッカー選手はみんな良い選手が揃ってますよね。

遠藤

ベルマーレのサポーターもずっと応援している選手が、日本代表としてオリンピックに名を連ねているところで応援のモチベーションが高いです。それは誇らしくて嬉しいですね。

遠藤航はもうボランチとしては、代表に10年くらいはいるようになるじゃないですかね。

遠藤

ドイツであれだけ活躍していることはすごいですし、全然変わらないのも凄くて、変わらないってのはプレーヤーとしてはすごい進化しているんですけど、人間性は全く偉ぶるでもなく、昔のままの優しい遠藤航のままで、その性格の部分はすごく嬉しいですね。

本当に吉田麻也と遠藤航は鉄板だなみたいな雰囲気がありますよね。

遠藤

本当にあの安定感はすごいですよね。

だから10年スパンで考えると、これから10年は久保くんもまた伸びるでしょうし、堂安もすごいじゃないですか。かつピッピと呼ばれている中井くんももうすぐトップに上がってくるとなると、キャプテン翼みたいな世界になったらいいなと個人的には思うんですけどね。

遠藤

若いうちから海外へ行くのも普通になってきましたし、昔はそんな時が来るのだろうかなんて思いましたけど、

そうですよね。それこそ中田英寿さんとは遠藤さんはほぼ同期ですもんね。

遠藤

そうですね。中田英寿さんが海外へ渡るときとか、活躍したことが今までの日本にはなかったので感謝の気持ちはありました。あれだけの活躍って意味ではなかなかないですよね。

地域の人たちにとって良いクラブでなければいけない

©SHONAN BELLMARE

本当にありがたいのはサッカーにしても野球にしても凄い時代にちょうどいることです。そこに対しては「ありがとう」と思います。それこそ本当にドーハの悲劇も生でテレビで見ていたし、ワールドカップに出場を決めた岡野のシュートも見ていた。ベルギーに一瞬勝てるんじゃないかって試合も見ました。

野球だと野茂からはじまるイチローや大谷の活躍もそうです。スポーツも日本にとっては素晴らしい時代にちょうどいて、遠藤さんも現場の方で携わっているということで。ある意味で仕事をしていたらそういうエポックなシーンが見れるわけですもんね?

遠藤

そうですね。私は選手を見守ってるだけですけど、コツコツと努力を続けた先に、プレー面、メンタル面共に成長して階段を駆け上がって行くような姿を見られるのは本当に面白ですね。

身内な感じになってきますよね。親のような。

遠藤

そういう意味では湘南ベルマーレを応援してくださっているサポーターの皆さんは、みんな親みたいな気分ですよね。

そうですよね。そうなるとサポーターの皆さんもベルマーレは生き甲斐だと言いますよね。

遠藤

あのときはってね。

俺には見る目があったなみたいなね。

遠藤

それがクラブチームのいいところというか、地域にあるクラブだからそういうことも起こることだと思います。選手たちも「ホーム」を感じてみんなが地域やサポーターの皆さんからの愛情を感じていると思います。

そうですよね。その距離感がこれまで地域のクラブとしてずっと続いていくためには一番必要なことだと思います。「何やってくれるんだ!」となると大変ですもんね。たまに大きなクラブだと起きがちな気がします。

遠藤

地域の皆さんにとって、もちろん選手個々を応援してくださるのもそうなんですけど。クラブを誇りに思うとか、クラブがこの地域にあってよかったと思えるものが、全国にあるのがJリーグだと思うんです。地域の方は逆に言うと、そこにいるクラブを選べないし、ベルマーレは湘南にあるので、地域の人たちにとって良いクラブでなければいけないと思っています。

©SHONAN BELLMARE

Edit & Text:Daisaku Mochizuki
Photo:Katsumi Hirabayashi