大学を卒業すると社会人へ
大学を卒業したら就職せずにクリエイターになるの?
カナイガ(クリエイター)
いえ、就職します。
ちゃんと就職するのは素晴らしいね。
平林克己(カメラマン)
(望月に向けて)もう33回ぐらい就職してるよね?
してないわ!
ダジャレと食べ物がテーマになった作品づくり
ダジャレと食べ物をテーマにした作品を作り始めたのはいつぐらいからですか?
カナイガ
この系統になったのは、大学入学直前ぐらいですね。
高校は芸術系ではなく普通の高校に通っていたの?
カナイガ
そうですね。
小学校ぐらいからクリエイティブなことをやっていたと思うけど。
カナイガ
そうですね。でも高校ではあまりクリエイティブな活動はしてませんでした。
本格的にクリエイティブにいろいろやっていこうと思ったのは大学に入ってから?
カナイガ
そうですね。
どんな経緯やきっかけで今の路線になったの?
カナイガ
気づいたらこの路線になっていました。自分はお笑いが好きで、中学・高校時代はひたすらお笑いライブに通って、笑いがあるものに良い影響を受けましたね。
それでちょっと笑えるようなものを作りたいと。今のような系統で最初に作った作品は「一旦CM挟みますサンド」ですね。
面白い、なるほどね。
カナイガ
言葉遊びでパンとパンのなかに「CM」と型どられた具が挟まっているサンドイッチです。
平林
作品づくりの最初のきっかけになったものは何だったんですか?
カナイガ
はっきりとしたきっかけはありません。小さいころから食べ物の見た目や特徴が好きで、たとえば小さいときに近所の川を見て、川の流れる音が焼き肉を焼いている音みたいだから、川の外の「焼肉屋さんだ」と言っていたり。
他には田園都市線のイスって茶色と黄金色になっているのを見て、ココアクッキーとプレーンクッキーだと思ったりとか。小さいときから気づくと自然に連想していました。小さいときからあることが、結果的に食べ物にまつわる作品になっています。そういう意味では小さいときの記憶が原点だと思います。
平林
小さいころに何かのスイッチが入っていたんでしょうね。普通はイスを見たらイスにしか見えないし、川の流れが焼き肉になる人って少数派だと思う。
インプットはTwitterとお笑いから
アイデアのインプットはどうしてるの? お笑いをみたり?
カナイガ
お笑いとTwitterが好きです。私の作品は食べ物とダジャレとか他のものでもダジャレの作品が多いので、Twitterでダジャレとかネタツイートを見るのが好きで、そこで得たものをいろいろ吸収した感じです。
平林
最初に作品を見させてもらったときに、僕はカナイガさんの作品を見せてもらったときに思わず笑ってしまったんですね。気が付いたらニコニコしていた。ダジャレ的な要素というか。やっていることのなかに人を笑顔にさせたいとか。
カナイガ
ありますね。自分自身が楽しいことをやっていたら、誰か他の人も楽しいと思ってくれたらなって。
実際にガチャガチャなんかで作品になるのは、Twitterなどで見た誰かしらからお声がけがある?
カナイガ
そうですね。私も望月さんみたいに、本当にTwitterをやっていなかったら、今みたいな仕事は出来ていないです。ほぼTwitterから始まってますね。
最初から話題になるってことじゃないもんね。
カナイガ
なかなかSNSのフォロワーが増えるのも時間が掛かりました。
平林
フォロワーが増え始めたら早いんじゃない? そうでもない?
カナイガ
1回ツイートがバズるとわーっと増えて、そのバズが収まったらそんなに増えなくなるの繰り返しで、ちょっとずつ増えてきました。
ありそうでなかった作品を世に出していく
カナイガさんの作品はこれまでありそうでなかったですよね。
平林
たとえば単純にお寿司の形をしたキーホルダーはあるけど、あれはただ単に形がそうなっているだけであって、カナイガ作品みたいなメッセージがなかったような気がするの。
カナイガ
私の作品はメッセージ性というか、面白さや新しさを感じるポイントが作品の中に入ってないと世には出せないですね。
カナイガ作品の「将トケー棋」で、作品を絶賛していたひふみんと藤井聡太くんに将棋を打ってもらいたいよね。
カナイガ
打ってほしいですね。それは夢ですね。
平林
もっと大きい作品は考えていますか?
カナイガ
つい先日公開した作品があります。たこ焼きって面白い食べ物だと思っているんですけど、船の形のお皿に入っているじゃないですか。あのお皿の船を巨大化して、実際に川に流したいと思ったんです。
一同
(笑)
カナイガ
それで千葉県の川で、たこ焼きが入った船を流してきたんです。
一同
(笑)
平林
船の中に入っているたこ焼きな人たちはどうしたの?
カナイガ
私の知り合い限定で「SNS」を使って募集しました。
平林
この作品はモノを作るだけではなくて、行動じゃないですか。モノとコトって両方大事だと思ってる感じだよね。これ自体はアートなんですか?
カナイガ
自分ではアートという言葉は積極的には使わないんですけど、でもアートって言っていただけるなら嬉しいです。
平林
アートってモノだけじゃなく、コトを含めてのアートだから。
いろんなものから影響を受けた
他のクリエイターに影響を受けることはある?
カナイガ
いろんな人たちから影響は受けているんですけど「この人に影響を受けました」はありません。あるとすれば、普段読まないマンガのなかで「完熟トマト新聞」という大好きなマンガがあって、この漫画は基本的にはTwitterにアップされて、自主制作の漫画本も販売されているんです。
そのマンガにはダジャレがいっぱい出てきて、こんなダジャレもありなんだって発見があって、それが自分のバイブルになっています。
クリエイティブを引き出す「写真」の意味
今の自分のこの状況を、過去のカナイガさんは予見は出来ていた?
カナイガ
半分こうなると思っていて、思っていた通りに進んでいる気がします。食べ物×ダジャレ作品をつくると思っていたわけではないんですが、クリエイターとしてやりたいことは昔から細かい夢リストを作っていて、それはちょっとずつ叶えています。
大谷翔平みたいやね。
カナイガ
思っていた道には、周りの力も借りて来られている感じがします。
お母さんがカメラマンなのも大きいのかな?
カナイガ
すごく大きいですね。作品の写真ってすごく大事だと思ってるんですけど、母がカメラマンじゃなかったら、私の作品もきれいに写真が撮れなかったと思います。
平林
素晴らしい話だね。
カナイガ
カメラの機材も大事で、いい機材はまだ学生なので自分では買えないじゃないですか。機材も貸してもらったり撮ってもらったりしています。写真でかなり作品がよく見えているところがあります。
平林
僕もみんなに言ってもらいたい。たとえば料理屋さんなら料理一筋でやってますとか、建築家さんなら頑張ってますとか、みんな頑張ってるんだけど、アウトプットになったものがダメダメな場合があるじゃない。
写真だけじゃなくて言葉やトータルで良さを伝えなきゃいけない。伝えるときに伝え方のクリエイティブが疎かになると頑張って作っても、どうでもいいようなクリエイティブで伝えることになる。
カナイガ
そうですよね。残念だなって思いますよね。
平林
残念ですよね。せっかくここまでクリエイティブを作っているのに、入り口から出口まで必要なんだけど、出口がなかったりね。
カナイガ
むしろ写真が良ければよく見えます(笑)。
平林
世の中の人が、みんなカナイガさんみたいだったら幸せだと思うよ。いい環境で育たれたんですね。
平林さんは写真はどんな種類でも撮る人だから。
カナイガ
何でも撮るんですか?
平林
何でもですね。僕の中では何を撮るのも全部アプローチは一緒なんです。
カナイガ
風景も人もモノも?
平林
写真の世界で言えば、お料理専門や建物専門のカメラマンがいるけど、すべての対象の大切なところは、みんな一緒です。大切な部分を見抜ける力があれば、食べ物でも人でも風景でも、それを見つけることができるかできないかだと思ってるんですよ。それさえできれば写真を撮れると思うんですよね。
撮るもので頭の中を切り替えていることは特になくて、むしろ建築だけ撮っていたら、いずれ建築すら撮れなくなる。
見る範囲が狭くなるし、そうなると絶対行き詰まるじゃないですか。新しいアプローチは外から持ってくるもので、そのときに人を撮るときや食べ物を撮る中でのインスピレーションが、建築にもフィードバックされる。建築で触れたいろんなものが、人にもいろいろ相乗効果が出ると考えてます。
でも自分が写真家を始めたばかりの頃に言ったら、誰も話を聞いてくれなかった。でも今は今話したような時代になってきたような気がします。
カナイガ
何においても領域を広げていくのが大事なんだろうなと思いました。
全然関係ないインプットがいっぱいあったほうが、あとから意外とどこかにつながるよね。
カナイガ
そうですよね。自分ができることはどんどんやりたいです。
平林
いいクリエイターである前に、人間的に良くなっていかないとクリエイティブはその人がつくる一部のものだと思っています。クリエイティブだけ頑張っても限界があるから、自分自身いろんな経験と知識をどんどん入れていけば、自然とアウトプットするものも良くなっていくんじゃないかなと思います。
実際にカナイガさんは今後社会に出て会社員として仕事もするし、クリエイターとして作りたいものを作っていくというのは良い立ち位置だよね。
カナイガ
本当に自分の立ち位置は活かしていきたいと思ってます。
平林
皆がカナイガさんと同じ立ち位置に立てるわけじゃないもんね。でも自分の努力もあったわけですもんね。偶然そこに来たわけじゃないし。
カナイガ
いろいろやってきました。
降りてきたアイデアをすぐに形にする
作品のアイデアを思いついてから作るまで、手かかるものとかからないものってある?
カナイガ
モノによりけりです。もちろん「たこ焼き」の作品はすごく時間がかかるんですが、基本的にガチャガチャではない自分の制作物は、思いついてすぐ作ることが多いです。アイデアが降りてきて「よし、作ろう」と決めたらすぐです。
あとは思いついたアイデアをスマホやノートに書きとめます。最近はスマホが多くなったんですが、スマホやノートにアイデアをためて、後から見返したときにピンと来たものはすぐに作ります。
アイデアは降りてくるタイプ?
カナイガ
はい。でもいろいろ考えた後に、時間を置いて忘れると降りてくるって流れがあります。
僕はお風呂でシャワーをしていたりすると浮かぶことが多いかな。
カナイガ
そうなんですね。
平林
カナイガさんの作品の一連のモノは何かブランド名があったり?
カナイガ
特になくて。例えば藤原麻里奈さんの「無駄づくり」みたいなものですよね。一度名付けようと思ったことはあったんですが、考えたネーミングがしっくりこなくて止めました。
でもカナイガ作品は何かブランドネームを付けなくても、カナイガさんが作ったことが分かる感じがすごいね。
カナイガ
そう感じ取っていただければ嬉しいです。
平林
一番の発信元はInstagramとTwitterのどちらですか?
カナイガ
どっちもフォロワー数があまり変わらないぐらいなんですけど、最近はInstagramのほうが
反応が良いと感じますね。
今のまま分かりやすい作品をこれからも発表していきたい
今後はどんな感じで活動していくの?
カナイガ
特に意図的に広げたり路線を変えることは思っていなくて、自分が自分が作りたいものをこれからも作り続けていきたいです。今のところはこの路線でやっていきたいです。
一発で何かがわかる作品が多いもんね。
カナイガ
そうですね。わかりやすいものしか、むしろ作れないというか。
それを意識していることってある?
カナイガ
人に伝わりやすいように、たとえば投稿の仕方、文章、写真の撮り方などいろいろ考えています。
プロダクトだけではなくて、写真や文章、どう出そうかまでトータルで意識はしている?
カナイガ
意識はしてます。そもそも作っているものはわかりやすいものしかないので、それを端的に見せます。
平林
たしかに分かりやすい作品ですよね。
カナイガ
自分は難解なものが作れないんです。
取材のあと
音声配信アプリ Stand.fmを使って、取材後のインタビューをしています。
Edit & Text:Daisaku Mochizuki
Photo:Katsumi Hirabayashi