いちるさんがブログに書いたホームインスペクションのはなし
いちるさんがさくら事務所のホームインスペクションを利用されたことをご自身のブログに書いて、反響も大きかったんですよね?
大西
最初に広報からホームページのアクセスが凄いことになってると言われ、見るといちるさんのブログからの流入で。「え、ここに載るの?」とすごいみんなでザワザワして。その後は「ブログを見たんです!」とお問い合わせもたくさんいただき、本当にありがとうございました。
いちる
みんなホームインスペクションって概念はわかるんだけど、具体的な作業をどこにお願いしていいか分からないケースがほとんどだと思います。Webでサービスのランキングを見てもいまいち信用できない。検索で引っかかる「いかがでしょうかブログ」を見ても腑に落ちない。だから僕が書いたような実体験的な記事で、納得感を得る方も多いと思いますね。記事を見た納得感で頼んだり話を聞いてみようと思う。
これはホームインスペクションに限らず、何でもそうですよね。たとえば自分の資産運用をしたい。でも積立NISAやドルコスト平均法って単語はわかるんだけど、具体的にどこで何を買って、何%ぐらいあるかって、結局は詳しそうな人の実体験のコンテンツを参考にすることが多いですよね。投資信託人気ランキングも参考にするでしょうけど、それがなぜ人気なのかなんて、初心者であればあるほどわからない。
大西
自分と同じ立場に置かれた人の意見が、一番説得力がありますよね。
いちる
そうですね。
大西
突然話とは全然関係ないんですけど、その背景はリアルお部屋をぼやかしていらっしゃるんですか?
いちる
そうですね。実際に後ろは本棚なんですけど。
大西
本棚が素敵だと思って。
蔵書は何冊ぐらいあるんですか?
いちる
何冊かわからないですけど、壁の2面が本棚ですね。
大西
壁2面が本棚! いいですね! 私もだいぶ前ですが、1部屋全部書棚って部屋に住んでました。いまは多拠点どころか無拠点で会社に住んでるんですけど。
大西さんがなぜ会社に住んでいるのか。それは当時さくら事務所で採用した外国籍の契約社員に起因していた。その契約社員はもう会社にはいないが、そのあと大西さんは社会人大学院にいったり、経営と両立するなかで、両親の看護やコロナ前は出張も多かったりで、拠点を他に持たず、通勤0分で会社の一角に今も住み続けている。
いちる
いま多くの人がリモートワークで通勤時間0分を体験して、その快適さに目覚めてしまってると思うんですけど、それをいち早く体験されてますね。
大西
しかも会社で!(笑)。家に仕事を引き寄せるんじゃなく、仕事側に家を寄せました。もう10年ほど前、私が役員になってから、会社もフルフレックス・フルリモートを実装してるんです。
いちる
そうなんですか。
大西
コロナ禍前は通勤をメインにしていたメンバーたちもいるんですけど、いまはリモートが中心になっています。もともとフルリモートも可能な環境なので、それこそご主人の転勤期間中、海外から仕事していたメンバーもいました。コロナ禍前から移住するメンバーもいました。
家を購入するときに助けてくれる人たち
いちる
もしかしたらもう会社におられないかもしれないですけど、僕の担当をしてくださったインスペクターはHさんでした。
大西
記事のなかでイケメンと何度も書いてくださって。
いちる
契約まわりのコンサルティングはMさんでした。二人とも、そもそも僕が家を買おうとしたとき、買う予定の家自体は子どもたちも気に入ってたし、立地的にも妻も気に入って良かったんです。でも仲介に入っていた不動産会社の担当者が、あまり僕の好きなタイプの人じゃなかった。もちろん本当のことは、別にその担当者と長く付き合ってるわけじゃないからわからないんだけど、ちょっと嫌だなと思ったんですね。
でも不動産に関する知識や経験は、不動産会社の担当者が圧倒的にあるし、押し込まれるようにして家の購入へ向かっていた感じなんですよ。営業に押されて高い買い物をすることは、たとえ客観的にこの家がいいと思ったとしても、「こういう買い方ってどうなんだ? もしかしたら何か悪い流れに乗ってるんじゃないのか?」と思ったんですね。
さくら事務所にホームインスペクションをしていただき、インスペクターが的確に不備を指摘して、不動産会社の担当者もこれはナメてかかったらいけない感じになった。契約のときも、契約のあらゆる段階でMさんには隣に座っていただきました。
その契約書には結局は決定的な不備はなかったのですが、でもMさんがいくつか的確な質問をしてくれて、「いちるさんは別に不動産のこと分かってるわけじゃないしょ?」、「我々はプロだから、我々に任せとけば安心ですよ」「出したハンコをここで押してみ」な感じの不動産屋側に警戒心を抱かせることができた。それによって僕もよりこの取引はフェアの取引になっている自信を深めることができたし、不動産の担当者も、もしかしたらどこかで1円でも10万円でも高くいただこうと思っていたかもしれないですが、まずいなって楔にもなった意味ですごく良かった。
いちる
だから全ての家を買う人は同じ体験をした方がいいと思う。今のお話を伺っていて、人が大事、専門家自身のスキルや知識・経験を通して、高い買い物をしようとしている素人を助ける哲学もそうだし、善良な性質がそもそも会社のカルチャーとしてある。その基準で人を選んでいると。だから僕の場合も出会った2人が2人とも良かったんですけど、そのカルチャーを持った人がサポートしてくれたんだと聞いて感じました。
大西
ありがとうございます。手前味噌なんですけど、うちは経営者はポンコツなんですが、会社はすごく心がきれいなメンバーに恵まれていて、自分の仕事が、家族と自分の子どもに誇れる仕事でありたいって純粋に考えてくれてるメンバーが多いんです。さくら事務所に入って正直体力的にもきついことも多いと思うんです。ハードワークですし、インスペクションは夏場の小屋裏って50℃を越えたりします。ハードなところを5時間かけて調べ、その後にレポートを作る。必ずしもその現場が仲介事業者さんを含めてウェルカムな雰囲気で終わることがなかなかなくて、トラブルな現場もあったりします。
そうした中でさくら事務所の仕事のやりがいを聞くと、まず「ありがとう」ってこんなに言ってもらえる仕事なんだとみんなが言います。住宅と建築の仕事に携わっていると、クレーム産業でなかなかこんなことはなかったとみんな言うんですね。直接「ありがとう」と言ってもらえるって。いちるさんもおっしゃってましたけど、微塵の後ろめたさもなく、とにかく誰かに喜ばれ、心からいいと思う仕事で、家族と自分に仕事を誇れる想いが、すごくやりがいになると言ってくれるメンバーが多いです。
いちる
仕事自体が素晴らしい内容だから、会社自体もヒューマンマネジメントをしなくて良いんですね。ある人に仕事を割り振ると、ある人の性質的にモチベーションが上がるかってことは考えなくていい。仕事自体がモチベーションのある仕事だからこそ、プロジェクトに集中したマネジメントが可能になるんだろうなと。
「囲い込み」という慣習がもたらす問題
不動産業界には「囲い込み」という慣習が存在していた。
いちる
「囲い込み」って何ですか?
大西
不動産仲介の世界では「両手」と呼ぶんですが、売主と買い主両方の取引を仲介することができます。これは利益相反なので他の先進国は禁じているんですが、日本はそもそも契約としてやっていいことになっていますが、その仕組み自体はよくありません。百歩譲って自然にそうなったものはまだいいんです。でも本来は売主と買主で全然求める利益が違うので、それぞれが独立した立場で交渉するために仲介会社があるはずです。
もっとひどいのは、それが進んだ「囲い込み」の問題です。売り側の仲介会社が、自分のところで売り側の「3%+6万円」の手数料だけでなく、買い側を付けると「6%+6万円」になるので、ここを目指して自分たちで物件を囲い込み、自分たちの買主がつくまで他の仲介に売買させないことが「囲い込み行為」で業界の悪習です。この慣習はまだ当たり前のように行われています。
いちる
僕もからくりは忘れてしまったけど、前に住んでた家を売るときに、安く買い叩かれようとしていて、それをMさんが救ってくれました。
大西
まさにそれです。本来売主側からすると、早く高く売りたいのが一番のご要望なので、一番早くオファーを出してくれる買主さんを見つけるために、たくさんいろんな仲介会社に依頼をかけてお客さんを探してもらう方が早い。
たくさん依頼をかけてたくさんの人に知られる=より高く・より良い条件を出してくる人たちとも巡り会う可能性が高いわけで。本来売り側の仲介会社はその中で一番いいオファーを出してくる人を売主さんのためにマッチングするのが仕事なんですけど。
囲い込みの場合は仲介会社たちが囲い込んでるので、そのスピードが遅くなりますし、知らせる範囲は当然自社内だけなので、その中でのオファーになります。だからそれよりも高くとか、それよりもより良い条件で出してくださる方の可能性を潰してることになります。
だから売主さんにとって非常に利益を損なうことになりますし、一方で買主にとっても売主とのマッチングをさせるために、買主側にいろいろなことをさりげなく外にもお客さんで狙ってる人がいると言って我慢させてるケースが多々あります。
だからさくら事務所は、そもそも囲い込みの原因となる両手取引の慣行を止めるべきと国交省に提言したりずっと活動を続けても無くならない中で、グループ会社に仲介のらくだ不動産を作ったときは、普通は仲介のアドバイスや説明しないことまで、しっかり知識をつけて説明することもエージェントとして当然の姿であると同時に、らくだ不動産は両手の取引は放棄し、片手しかやりませんと宣言して会社を作りました。
いちる
なるほど。だんだん思い出してきた。Mさんが僕が物件の売却をお願いしていた不動産会社に電話したんです。
大西
それは両手取引かどうかの確認ですね。
いちる
一般の不動産業者のふりをして「こういう物件ありますか?」と聞いたら「いや、ありませんね」と先方が返したんですよね。「そうですか、ありがとうございました」と電話を切った。それで「囲い込みを仕掛けられてます」と教えてもらって、すぐその不動産会社にお願いするの止めて、別の不動産会社にしました。結果的には買ったときよりも家が高く売れて良かったです。
大西
他業者さんが電話をかけると「お話入ってます」と言って、お客さんをつけさせないんですけど、一般の人が電話をかけると「今すぐ内見できます!」となります。
いちる
なるほど。それそれ!
一同
笑
いちる
だから不動産会社に電話してくれたのは、Mさんの個人技だと思ってたんですけど、そうじゃないんですね。さくら事務所も会社として囲い込みに関して取り組んでいて、そこに問題意識を持ってやっていたってことなんですね。
なぜ「らくだ不動産」はらくだ不動産なのか
いちる
ちなみにらくだ不動産はなんで「らくだ」って言うんですか?
大西
いいところ!w さくら事務所、らくだ不動産、そしてもう一つ防災のシンクタンクでだいち災害リスク研究所を今年作ったんです。
一同
笑
いちる
名前決めるきっかけなんてないから、そのくらいがちょうどいいですよね。
大西
そうなんですよ。無尽蔵に候補があるなかで考えていくとキリがないじゃないですか。だから遊び心でしりとりってこともあります。ただ「らくだ不動産」の場合は、真面目な話、最初からまず動物の名前にしようと決めていたのと、できれば「さくら事務所」なのでしりとりになればいいなと考えてたこと、そのなかで「らくだ」に決めたのは、不動産取引が一般の方にとって「楽」で「楽しいもの」にしたいこと。
不動産取引の中で、すごく2〜3カ月間も売却や購入期間、ずっと不動産のことを考える方が多い中で、そのプロセスがモヤッとストレスフルで必ずしも楽しいものじゃない方って多いんですよ。それをすごく楽で楽しくて、メモリアルなものにしたくて、らくだの文字をかけてるのと、あともう一つはらくだって足が速いんですよ。
いちる
へー。
大西
本気出すと時速60キロぐらいで走れるらしくて。
いちる
意外!
大西
らくだは砂漠で人間の荷物という、いわゆる重荷を背負って人を助けていて足が速い。そのらくだの姿をエージェントの姿の理想としたいなって。人の重荷をお手伝いさせていただいて、仕事が早い。結果的にその不動産をその方にとって楽なものにするし、楽って漢字のダブルミーニングで楽しいものにする。そういう意味を込めて「らくだ不動産」にしました。
家を買うときはゴールデンカムイのような登場人物が次々に現れる
いちる
不動産を売ったり買ったりするときには次から次へと怪しい人が出てきて、ゴールデンカムイみたいな感じで、誰を信用していいのかって。
大西
ゴールデンカムイはあまりにエグくて読むのを途中でやめちゃったんですけど。
いちる
ゴールデンカムイはむちゃくちゃ面白いですよ。ちょっとえぐいの我慢すれば大丈夫ですよ。
大西
呪術廻戦みたいなエグさは大好きなんですけど、ゴールデンカムイは個人的にちょっとダメでしたねえ。
いちる
僕はゴールデンカムイをあまりに面白くて一気に読んで、漫画に求められているものがすべて入っていたんで。
大西
いちるさん、Twitterにもよくゴールデンカムイのことを書いていらっしゃいましたもんね。
いちる
そうですね。面白かったです。でもそのゴールデンカムイに出てくるような怪しい人が、次から次へと僕が不動産を買うときに出てきた。
大西
そうなんですよ。
いちる
さくら事務所のMさんHさんも、最初はちょっと疑っていたのですが、でもすごく誠実にわかりやすく説明してくれて、すぐ信用できました。ところで、次に僕が求めるものは何かと考えると、5年目・10年目の家のチェックなんですよね。
大西
はい。
いちる
5年目などの点検をどこにお願いしようかと。普通は家を建てたところにお願いするのかもですが、それ以外と考えたとき、選択肢が多すぎて、詳しくないとどこを信用したらいいかわからない。またゴールデンカムイみたいな話になっていますが。
僕は最近FP(ファイナンシャル・プランナー)の勉強をしているので、不動産あれこれについて少し知る機会があります。不動産関係の規則ってできるだけフェアにやろうとした結果、ものすごい難しいことになってる感じがしてます。防火地域80%以上だと何とかとか、ものすごく細かく決まっていて、素人は手が出せない業界だと思っていて。
魑魅魍魎がたくさんいるから、そんな気軽に「iPhoneどれ買ったらいい?」みたいな感じにはいかない。
一同
笑
いちる
その中で「透明性」って旗を掲げて、会社の仕組みとして納得ができるような形で不動産取引や不動産にまつわる諸々をやろうとするのは、家を買う人と買う周辺のこと、メンテしたり売ったりいろいろしたりする人にとって大事で、そこを誰かが切り開いていかなきゃいけないと思うんで、話を聞いてて、今日はすぐ大事な仕事をされてるんだなと思いました。
大西
ありがとうございます!!!
Edit & Text:Daisaku Mochizuki
Photo:Katsumi Hirabayashi