就職氷河期世代と呼ばれて
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望月
この中で就職活動をした順番は平林さんが最初ですか?
平林
僕は海外に行っていて就職活動は遅れているから、最初かどうかわかんないよ。皆さんは入社年度はいつ?
望月
僕は大学で就活失敗して大学院に行ってるので。
平林
みんな普通じゃなかった(笑)。
徳田
俺は新卒入社ではないから2004年3月から働いている。
望月
あれ、徳田さんは新卒ではない?
藤原
そうなの?
徳田
当時、新卒で内定をもらった会社を卒業直前の3月に辞退したんよね。申し訳ない。
一同
(笑)
望月
みんな普通じゃなかった。(2度目)
平林
計算通り、みんな何かありますね(笑)。
望月
じゃあ順風満帆に見えるのは藤原さん?
藤原
そうかね?
徳田
本当は4月入社やったけど、3月21日に卒業式、22日に上京して、23日から業務委託で働いている。
望月
平林さんはそのちょっと前ぐらい?
平林
そうですね。僕が就職したのはそうは言っても99年だね。
徳田
99年の時の就活の状況だと就職氷河期の真っ只中ですよね?
平林
真っ只中ですけど、ただ日本の会社じゃなかったからね。
徳田
なるほど。就職氷河期は日本の会社の話ですかね。
平林
ただ周りで言葉的には氷河期という単語はよく聞いてたんだけど。
徳田
いま検索してみたら、就職氷河期は92年11月に作られた造語なんやね。就職氷河期は意外と前からなのか。
藤原
誰が考えたんですか?
徳田
リクルートのよう。
藤原
ああっ
一同
笑
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徳田
雑誌『就職ジャーナル』で92年11月号に作られ、バブル景気から一転して急落したと。※
望月
『就職ジャーナル』ってありましたね。
藤原
バブル弾けてすぐ?
徳田
そうやね。
平林
氷河期と言われても、数字で明らかに氷河だったんですか?
望月
就職するための倍率が当時めちゃめちゃ高かったはずです。
平林
今と比べても?
望月
今と比べても今のほうが当時より就職するのは楽だと思う。リーマンショックのあとにプチ氷河期になったんですよね。その後は就職氷河期よりも就職はしやすいんですよ。※
※同じく※Wikipedia参照
徳田
就職氷河期は思ったより長かったのか。そう思ったら俺らは就職氷河期の最後の方ってことやね。
平林
当時就職活動をやってるところを見てると大変だなと思ったな。
望月
入社試験はめちゃくちゃ受けました。当時は関西にいたんで、余計に大変だったんですよね。
徳田
それはあった。ほとんどの会社じゃ「最終面接」になるまで交通費が出ないんよね。だから関西は不利なんよね。
平林
就活ってそれなりに何十万かお金がかかるんだね。
望月
地方在住だと特にかかります。
徳田
往復なら2〜3万はかかるよね。
平林
もしかしたら人生で1番大変なんじゃないですか?
徳田
今の就活はどうなのかわからへんけど、確かに大変やった。
望月
でも今はオンラインでの試験もあるからね。
タイパ、コスパ、YouTube
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藤原
話が変わるんですが、今年からビジネススクールに行ってます。そうするとMBAなんで私より下の世代の人も多く、20代後半の人も来ます。若い人の勉強を見ていると、もちろん教科書もあるんだけど、本じゃなくてYouTubeでそのことを説明してる動画をうまく見つけてきて。それは別に提出物じゃなくて、自分の予習をする時に、それをキャプチャーで自分のパートに貼って事前に予習するので効率いいと思って。
徳田
いわゆるタイパの話やね。
藤原
別にサボっているわけじゃなくて、時間を有効に使っていて。僕もそのやり方を見たんだけど、未だにできない。そういった意味だと、若い子はその効率的な使いこなしは格段にうまい。うまいと言うよりは当たり前だけど。
徳田
いろんなメディアを使いこなすのはうまくなってる気がする。
望月
僕なんてYouTubeは未だにほとんど見ないもんな。
藤原
俺も全然見れる見れない関係なく、全然見ない。
徳田
逆にYouTubeはめちゃめちゃ見るね。
望月
マジで? たまにマルチ商法を告発する男とかの動画は見るかな。
一同
笑
平林
YouTubeの中から、本当に必要な情報を見つけるコツってあるの?
徳田
確かに。動画が勝手にかなり流れてくるもんね。
平林
YouTube以前だと本を買っていた。本はある程度の質を超えたものじゃないと出版が出来ないから、程度の低い情報は今ほどなかった。でもYouTubeを散々見てみたら、流れるだけでいい情報にたどり着くのがすごく難しい。
望月
再生数を稼いでいるだけの場合もあるし。
徳田
アルゴリズムでリコメンドされたりもね。
藤原
ちゃんと選んでる人と、選ばない人に分かれているんじゃないですかね。
望月
自動でレコメンドされた動画を「ながら観」する人もいるもんね。
藤原
うん。選ばない後者の人は閲覧されている数字が大きいとか、たまたま表示されたとかでYouTubeを見てるんじゃないですかね。
平林
望月くんの卒業した大学の専攻で今教鞭取っている先生と一緒にAIについてやっていて。そのAIの話の中で、既に自分のところに来る情報は、かなりカスタマイズされてくるじゃないですか。そうすると正しい情報、本当はインターネットは広い世界を見れるはずが、AIでカスタマイズされた結果、自分に届く情報が偏りすぎますよね。
藤原
そうですね。
平林
その情報をみんな正しいと思ったり、それが全てだと思うのが、今の傾向だと先生とちょうど話していたところだった。
徳田
陰謀論系についてもそれでハマりやすいのもあるかも。
平林
陰謀論系のことをちょっとでも言うと、どんどんそんな話ばっかりにレコメンドされちゃうから。
望月
陰謀論系もうちらより上の世代の方が、それが世界の全てだと思ってしまってハマりやすいですよね。
平林
でも逆に今の20歳前後の子たちが、その情報が来たとき、「これ以外にもいっぱいあるんだ」と理解してるのかな? 今はコロナ禍もあってリアル経験が少ないから、ほとんどの子がYouTubeを中心に視覚的要素で情報を得ていたとしたら。
望月
難しいことだとは思うんですが、たとえば親が開明的な人で小さいころからツールを与えられていて、いろんなものに触れている人は情報の偏りに左右されにくいのかなと感じます。ただ逆に同世代の活躍とか、SNSとかいろんなツールを見ることで、逆に心がへし折れる子もいるはずで、諸刃の剣でもあると思っていて。
平林
そうですね。いろんなもので極端な2者の存在がある気がします。
望月
今日ここで話している人は、順々に激変する環境に慣らされていったと思います。たとえば小学校ではこういう人がいる、中学校でまたこんな人がいた、さらに東京へ出てくるとか、社会人になって会社で働くとかで、インターネットも含めていろんなことを知っていったじゃないですか。
でも現在は探し方さえわかれば、誰でも年齢関係なくわかるわけじゃないですか。親が何の仕事をしているかも検索したら、お父さんの仕事は分かるじゃないですか。だからリテラシー面も含めてうまく立ち回らないと面倒で。あのブラボー長友ブラボーだって大学に入るまではサッカーではレギュラーじゃないですからね。
藤原
明治だっけ。
望月
うん。でも努力をした結果、4大会連続でワールド杯に出て、ブラボーブラボーと言って、みんな喜んでるわけじゃないですか。だから小学校の時点でメッシみたいな子どもがいることに何か情報を見て絶望してサッカーを辞めていたら、その時点で試合終了だから難しいですよね。
平林
そうですね。
望月
誰が運命を決めるってわけでもないけど、大器晩成で才能があるはずなのに、早々に諦めるとそこで才能が潰えてしまう可能性もあるわけじゃないですか。メンタルなんて後から鍛えられるもんなんで。最近その難しさを考えることが多くて。
平林
とにかくいろいろ難しいね。
世代論なんて宇宙から俯瞰して見たら誤差
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望月
タイパを求めすぎたイイコちゃんほど、ぶつかったらボロっていきそうな気がしてて。いろんなところにぶつかりながら生きてる人の方が耐久性がある。
平林
比べてもしょうがないんだけど、現代生きている現時点での20歳前後の子たちは厳しい環境にいるなって思ってしまう時があるね。
望月
もういろんな数字に左右されている世界じゃないですか。小さいころから、いいねとか、フォロワー数とか。もう5年後にinstagramがあるかわからないですけど、今とは違う世界になったらなったで、今とは違う世界の問題が出てくるとは思っていて。それは親次第でもあるから。
徳田
どれだけその差があるのかわからない部分もある。もちろんツールはどんどん増えてるし、メディアも増えてるけど、俺らの時ともそんなに変わらない気もする。
個人的にはあまり世代論が好きじゃないんよね。
20歳の子たちでもYouTubeをこれがすべてと思って見ている人もいれば、そう見ていない人もいる。俺らのときも同じくテレビでヤラセっぽくやっているのを見て本当だと思う人もいれば、そうじゃない人もいた。だからあまり変わらへん気もするけど、その辺はどうなんやろね。
藤原
まあ、メディアが違うだけでしょ。
徳田
そんな気はしていて。もちろん世代の差もある。さきほどの就職氷河期の話もあるし、少子化のときはクラスの人数が少ないこともあるから、多少の差はあると思う。ただ、どこまでその差があるのかは正直わからへんね。
藤原
宇宙人目線で俯瞰で地球を見たら、ほとんど変わらないかも(笑)。
徳田
所詮、誤差ぐらいな感じもする。あまり決めつけて言うのはよくないなと。Z世代論に関しても同じ。自分たちはZ世代と見られたくないと言っているZ世代の知り合いもいるね。
そもそも世代ってどれだけ差があるんかな。俺らも上の世代からそう思われているかもしれへんしね。
藤原
自分の親世代も同じようなことをね。
望月
いわゆる「若いやつは」って話でしょ?
徳田
そうそう。
2倍速、しますか? しませんか?
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望月
でもタイパ・コスパを追求しすぎるのは、結果的なタイパには繋がらないんじゃないかと。
藤原
処理しなきゃいけない情報量が多いから、別に短縮したいわけではなくて、1日が24時間と限られているから、その時間内でやらなきゃいけないことがあるなら、ここを縮めなきゃいけなくなる。
徳田
確かに情報量の差はあるかも。俺らの時の情報量と、今の情報量はデジタルを含めたら圧倒的に多い気がする。
藤原
そこで人間の処理できる能力は時間も限られてるからね。
徳田
メディアの種類というよりも、情報量は確かに圧倒的に今の方が多いやろうね。
望月
でも、ドラマや映画を全部2倍速で見るのはすごいな。
徳田
Podcastは2倍速で聞いてるけどね。
藤原
それはよく聴くけど、全然無理なんだよね。
望月
音としてだけではなく雰囲気も含めて認識しない? 情報としてだったら確かにありかな。
藤原
言葉はいいけど、音楽なら音調が変わるし、2倍速で音楽は聴かない。
徳田
音楽を2倍速で聴いているという人はしらへんね。
望月
そうね、音楽を2倍速で聴く人は聞いたことないね。
徳田
いるんかな? 映画やドラマを2倍速で観る人はいるけど。
藤原
映画やドラマを2倍速で見る人がいるなら、音楽を2倍速で聴く人もいるんじゃないかなと思うけど、ここまで聞かないね。
望月
たしかに。あと渡辺陽一氏の話は、2倍速にしたら聞きやすいと思う。
一同
笑
藤原
音楽の場合、単純に2倍速ではなくてイントロが短い曲が増えたりとか、そういうのはあるね。
徳田
同じ年代でもドラマを2倍速で観る人はいるな。
望月
映画も2倍速で見る人もいるからね。
藤原
それは情報処理の観点で見てるんだろうなって。ドラマを何本か見なきゃいけないのがあって、でも見たい作品もたくさんあって、でも時間は限られているから2倍速にして収めている。
望月
僕はそれだと、もうあらすじでいいやんと思っちゃうかな。
徳田
後はやりやすくなったのもあるかも。以前までやったら、テレビがリビングにあり、そこで見るコンテンツを2倍速にするとリビングにいるみんなに迷惑がかかった。でも今はスマホでも見れるから、自分の好きに操作できるので、2倍速で観てるのかも。
望月
スマホで見る人が多いっていうもんね。
徳田
お風呂で観たりね。平林さんは2倍速で観ますか?
平林
いや、2倍速だと追いつかないですよ。あとは速ければいいとは思わなくなった。たとえば移動とか。
望月
平林さんは移動が多いですもんね。
平林
移動は多いけど、たとえば新幹線だと東京〜名古屋はのぞみで1時間半かかるじゃないですか。こだまに乗ると2時間半ぐらいかかるんだけど、ある程度まとまった時間がないと出来ないこともあるよね。
藤原
それはそうですね。
平林
こだまの方が空いてると考えたら、1時間半で中途半端に着くよりも3時間かけて移動するあいだに企画書を書くとかね。あとは苦痛の1時間半を我慢するんだったら、景色を楽しみながらと考えたら、3時間かけるほうがいいかも。
徳田
ある意味それは逆のタイパよね。時間の有意性という意味で。
平林
ご飯を食べることを考えたらわかる気がします。ご飯をバーっと食べて、カロリー補給できて昼飯ミッションがコンプリートされてもちっとも面白くない。でも楽しみながら昼飯を食べたら、そもそも栄養補給もできるし、いい時間を過ごせるよね。さっきの音楽を2倍速で聴くか聴かないかの話はわかりやすい。
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Edit & Text:Daisaku Mochizuki
Photo:Katsumi Hirabayashi