コロナのまえとあと / 竹中功

  • 竹中功作家 / 謝罪マスター

写真:平林克己
聞き手/編集/執筆:望月大作

目次

  • バイトはじめるんですか?
  • 仕事の相性
  • 別の何かを学ぶ仕組みが必要
  • 想像力の低下
  • 取材のあと
  • [New]まえとあとのあと
  • オンラインでの試行錯誤に触れてみて
  • オンラインで本当に求められているのは雑談力?
  • バイトはじめるんですか?

    竹中功(作家 / 謝罪マスター)

    以前テレビCMで松本人志がしつこく宣伝してたので、いまバイトアプリを登録してると、いつも案件の案内メールが来るんよ。そろそろバイトに行かなあかんなと思っていて。60歳以上で経験なくてもすぐに働けるって感じのを登録してるねん。

    体はもう歳やから無理は出来ないけど、ひょっとして出来る仕事があれば、アルバイトしようかなって思って。ここで少しでもアルバイトをしていたらそれもネタになるんやけどね。ネタでやったら怒られるかな。まぁ労働に対する対価のギャラやからもらっても当然やろうから、バイトでもしてみようかと。

    望月

    でも真面目にやってればネタでも良いと思いますけどね。

    竹中

    そうそう。ものを書いたりする仕事もあるから、まだバイトには行ってないけど、時間の整理やコロナが落ち着いて職場に迷惑かからへんような仕事があるんやったら、ちょっと行ってもいいかな。

    望月

    でもそういうバイタリティがあるのが、竹中さんはすごいなって思いますね。竹中さんと同じ世代になるとバイトに行くなんて思う人のほうが少ないですよ。

    竹中

    それなりの大企業などで働いていた人にとってはそうかも知れへんけど、単純に考えて60歳過ぎて仕事があるなら、それは幸せやと思う。吉本興業に僕の同期が二人、役員で残っていたけど、偶然今年の3月末で二人とも退社してしまった。関連子会社に残るなどもせずに、会社人を辞めてしまった。一人は自宅の庭を農園に。一人は健康麻雀なるものをやってるとか。僕から見たら呑気でええなぁと思うけど、本人はどんな感じなんかな?

    バイタリティがあるのは、このウイルスに負けずに生きていく免疫力を保持するみたいなことやからね。だってこれで気持ちがマイナスだったら体もマイナスになってるやんか。それは芸人を見ても、エンタメの世界ではよくある話。でもそれに限らずやろうね。気持ちが後ろ向きなやつは体も弱っていくから。

    そういう意味でいうと、誰かにバイトをしろと言われたわけではないけど、やってみようと。怒られるかな、でも怒られたら謝ったらええか、とか言いながら、5000円くれたら嬉しいなって。夜中働いたら8000円くれるかもしれないなとか。というのは半分シャレもあるから、真面目に働いている人には叱られるかもしれへんけど。会社に行くだけ行って、仕事もせんと仕事しているフリしている人に比べたらマシやと思うねん。

    望月

    それはそうですね。

    竹中

    「竹中さん、お金あるのに趣味でバイトですか」と言われるけれど、ほんまにお金もないし。退職金ももう無いし、今も働いて飯を食おうと思っているわけやから、そういう意味でいうと、もう一回労働に出直さなあかん。いま本気で働くのはやってもいいと思ってるねん。

    仕事の相性

    望月

    そういう発想の原点は昔からですか?

    竹中

    それは昔からやね。吉本の仕事も仕事で、職人さんみたいに歴史を積んで上手くなっていく面もあるけれど、年齢で積み上げられない仕事との相性で決まるものもたくさんあった。だから経験を積めば積むほど良いマネージャーとして良いタレントを生み出せるのかと言えば、そうでもない。自分と相性の合うタレントやったら、めちゃくちゃ売ってあげて日本一になる人もいるし、日本一のタレントとは合わないけど、本当に年間に1〜2回しか仕事をしていないような芸人を鍛える方が向いてる人もいる。

    お笑いの基準は見る人によってバラバラで違うし、作り方も一つではなかった。そんな世界におったから、マニュアルも存在しなければ逆に感覚が重要で、フィーリングが大事やった気もする。

    望月

    仕事の相性は間違いなく大きいですね。結局仕事の内容よりも誰とやるかですよね。

    竹中

    そう。仕事によっては自分で決められないものもあるし、決められる仕事もあるし。それに1回相性が良かったから、一生良いとは限らへんからね。今度は仕事と相性が合うか合わないもあるもんね。僕は合わしていくタイプ。

    昔はわりと僕に合わせてほしいとか、みんなで決めたものに対してみんなで合わせていこうとやったけども、歳取ってからは独立独歩が楽になっていったね。だから経営者になり、組織の面倒を見るのはきっと向いてなかったから辞めて良かったと思った。

    最後は関連子会社の社長もやったけど、そうなると人を育てることや組織とか仕事を見る仕事になっていくけど、だからと言って自分がオーナーではないから、自分が何でも決めれるわけでもなかった。そういう意味では、ええ歳してそんなところで頑なに会社の座を守ることよりも、辞めることを自分で決めて、自分のことは自分で決めるほうが楽やった。

    望月

    でも歳を取っていくと、会社の座を守る人のほうが多いですよね。

    竹中

    多いよね。でもきっとその多くの人は良い大学を出て、それなりの企業に勤めていると、そう思うようになると思うで。僕は吉本に35年ほどいたけど、芸人はもちろんやけど、クリエイティブな人は本当に一匹狼やんか。ディレクターや作家、イラストレーターに写真家でもそうやんね。そんな人らは仕事がなかったら次は収入0円みたいなところがある。

    今回のコロナで言うと、収入を求めるような局面でも大きく差が出たわけで、今のところ会社が潰れるところも多いけど、潰れなかったら給料くれるやん。雀の涙でもボーナスもあるかも。でも飲食業の兄ちゃんとか僕みたいな仕事をしていて、仕事が全部キャンセルとなったら、その月の月末も翌月も売上はは0円になるからね。その上、店をやっている人は家賃や人件費もいるやん。この辺が会社員であるか否かがはっきりしたところなんよ、銀行に振り込みがあるかどうか。

    しかし企業人も商売人も、生き残らなければならないけど、コロナ前と同じ姿にはもう二度と戻らないと思う。その覚悟とその次の世界をどう設計するかが重要。「昔を夢見る」っておかしいよね。過去を懐かしんでいるより、未来を「夢見る」ことのほうが大事やよね。ということはそこのところの「想像力」が重要なのだわ。

    この自粛要請のあった1〜2ヶ月間、暇で試されたけど、なかなかうまく自分自身でも実験してないよね。「何かネットで学びましたか」とか、「見たい映画20本に見ましたか」とか、どれも叶えられなかったのよね。でもここで何を考えたか、力をどう蓄えたかによって、このコロナショックがあと2年続いたとしても、めげんと生きていけるのか、もう限界ですと鬱になったり、喧嘩して離婚したり、会社潰れて本当に就職先がなくなって泥棒なるやつが出たり、もちろん自殺する人が増えることも予測されるだけに「気の持ち方」が生死を分けると思う。

    僕は世界を救う立場じゃないんで、ようやらんけど、せめて知り合いが死にそうになっていたら助けてやりたいし、死にたい言うたら、「やめろ!」って止めるし、お金はないけどおにぎりを1個あげることは出来るし、自分以外におにぎりをくれる人を探すことは出来るはずやねん。

    だからコロナショックを前にして、どっかで知力体力やないけど、その辺りの能力を上げたやつはこの先も強いと思う。家族との会話もするし、友だちや会社の上司も後輩ともまともな会話もできる。ここは人間力やね。ただ残念なことに、この「まとも」さえも再確認せねばならないほど、「社会性」を失った人間も増えてる。特に老人があかんなぁ。僕はそっちに行かないように我慢してる。「昔話しない。自慢話しない。説教しない。」て決めて生きてたら高田純次も同じことを言ってたわ(笑)。

    別の何かを学ぶ仕組みが必要

    望月

    5〜10年経ったとき、いま学生世代の子たちって、コロナ世代と呼ばれるじゃないですか。

    竹中

    なると思う。何でもコロナのせいにしよるねん。勉強できないのはコロナのせい、いい仕事に就けないのはコロナのせい、結婚できないのはコロナのせい、離婚したのはコロナのせい、太ったのはコロナのせい、売上が少ないのはコロナのせい・・。言い訳に何でもコロナのせいや言いよるねん。

    望月

    ある種災害だから仕方ない面はありますけど、ちょっと可哀想ですよね。国が決めてしまったことやから、もうどうしようもないですけど。

    竹中

    家の責任だと言われても、家にも限界あるよね。

    望月

    親が教えることにも限界があるじゃないですか。それこそ中学校以上になってくると。だから今は可視化されないですけど、5〜10年経った時にかなり影響出てくるんじゃないかと。

    竹中

    そうなんよ。だからそのときはそのときで、今まで通りの試験をして、そこでフルイに掛けていくわけやんか。

    だからこそ別の何か学ぶ仕組みを準備しておかないと、例えば因数分解は苦手だけど、ボランティアの方法を知ってますとか、人工呼吸の仕方は全員知ってますとか、他に身につけるものもあるんちゃうかな。

    望月

    親御さんも課題だけ出されて家でお願いしますと言われても辛いだけですもんね。

    竹中

    でも教育者側も崩壊しているからね。学校へ行くなと言うわ、面倒は見とけ、その人自身も家がぐちゃぐちゃになるやんか。

    望月

    子どもがいる先生たちも多いでしょうしね。

    竹中

    だから結局個人主義をここまで貫いてきたせいで、何かでちょっと助け合いをしようとしても、誰もノウハウがないし経験がないからやり方が分からない。

    望月

    去年の今ごろはワンチームだって言っていたのが嘘みたいで。

    竹中

    そこまで時間経ってないけどこんな程度。でもコロナウイルスに関しては半年経ってこんなことあったなーとはなってへんと思う。

    想像力の低下

    望月

    今なかなか先を見通して何かをする人がいないですよね。

    竹中

    そうでしょう。夢といえば夢なんですよ。でもそれをいかに具体的なものに則って言うかは出来るはずなんでね。駅前のでっかい銀行はもういらん。コンビニのATMで済むもん。キャッシュレスが普及したらお金をポケットから出すことが無くなるでしょ。次の時代をどう設計するかぐらい、何でもかんでも経済学者に予測を聞くんじゃなくて、自分がどうするかぐらいは自分が語らないとね。知り合いなんか、仕事のギャラの支払い、アマゾンポイントやで。もう昭和の頭の企業、死に体やねん。

    だから教育もそこですよね。学校が頼りになってないときに、親がどこまで何を教えるか。因数分解は教えられへんけれども、たとえば今回のナイナイの岡村隆史の話ではないけどね、差別や人権の尊さを教えることを今やっておいてくれるとかね。ここはコツでいうと「相手の気持ちを察する力」を持つことやね。残念やけど岡村はここが少し欠落してた。ただ気がついて反省してんから、ここは叩き潰すのじゃなくって、やり直しに期待してやってほしいわ。

    これからの教育でプログラムを教えるって言ってたけども、「プログラミングこそAIに変わってもらえるねんから、人間にプログラミングを教えてどうすんねん。そんなんいらんやん」ってホリエモンが言ってたけどね。こんな大阪弁やないけど(笑)。目の前のプログラムをやってみるのもええけど、「こんなものがあったら、こういう人が救われるなぁ」って考える想像力の方が大事やと思うねんけどね。

    望月

    プログラムなんかは興味があればやればいいものだと思いますね。強制的に教えるものではない気がしますよね。

    竹中

    本当にそう思う。その興味の発信とか発想かな。例えばこんなことがあったら婆ちゃんが助かるからプログラムを覚えてみようとか、こっちの動機づけに気づく人間を作らないと。目の前のことを教えるのが好きやろうけど、将来とか社会を広くどう見たらいいか語る人がいない。

    望月

    今の竹中さんの話はそうで、何かを解決したいからこれがしたいとなるのが、ある種の起業家発想じゃないですか。だから将来起業を考える子が必要なら、そういう動機付けでやった方が絶対いい。

    竹中

    そうでしょ。だから僕の未来の予測は、生活においての想像力です。プログラムが上手でとか人より早く良いものが作れるのは昔からそうだけど、この先に欲しいものはもっと上位の概念を設定する力ね。たとえば山好きの婆ちゃんが足を怪我して山を登れなくなれば、もう1回うちの婆ちゃんを山に連れて行ってやりたい。そんな「婆ちゃんを笑顔をにする」っていう上位の概念があるから、ロボットで足を作るのか、ドローンで婆ちゃんを飛ばしてやるとかのか方法を考えてあげたらええのよ。そこの気付きと具体化の脳みそを鍛えるのが、こういうコロナ禍のときなんやけどね。

    絶対に今のこの国を作ったのは想像力の低下ですよ。上位概念を設定して、下位に下ろしてきた時の具体化の能力の低下ですわ。

    望月

    想像力は低下していると思いますね。

    竹中

    その想像力の低下の話で、この前、松本人志が、学校の授業に大喜利を取り入れたらいいと言ってた。周りの人は大喜利の定義が分かってないからつられて笑ってはったけど、僕はその意図がよく分かった。完全に同意した。

    答えは1つとか、歴史の年号を覚えるやないけども、記憶したり決めることを決めて覚えることが大事なのが今の教育やけど、大喜利はここで何を言ったら面白いかとか、こんな捉え方もあるって答えがいっぱいあるわけでしょ。

    答えがいっぱいあるのが大喜利で学べるんだから、大喜利を学校教育に入れたらというのが松本の言い方。でも大喜利ができる学校の先生は一人もいないからね(笑)。答えはだから1つなわけでしょ。犬はdog、猫はcatと教えるけど、吉本の先生やったら犬はワンワン、猫はニャーって言うわけですよ。また吉本興業の芸人の職域を広げてしまったかな?

    もちろんdogもcatも合ってるけど、ワンワンもニャーも間違いではないですよ。そういう、色んな答えも正しいことを大喜利で学べるんだったら、今の時代に必要かなって。彼はよく分かってますよ。

    望月

    そうですね。だから答えがいっぱいあるって価値観は持っていた方がいいですよね。自粛警察とか正義の暴走に繋がるような発想になってくるんで。

    竹中

    そうそう。だから本当は失敗はしても笑われたりしても、きっとお笑いが良い先生になってくれるはずで。失敗しているやつ、世の中で生きていけないやつが芸人になっているんやから、そのつもりで見て聞いてあげたら良いと思うねん。

    取材のあと

    音声配信アプリ Stand.fmを使って、取材後のインタビューをしています。

    [new] まえとあとのあと[アップデート版]

    FAXは止め!

    望月

    今回は以前の記事に追記する形となりますが、本当に記事の反響が大きかったですね。

    竹中

    そうでしたね。ありがたいことです。

    望月

    竹中さん、YouTubeを始められましたよね。

    竹中

    はい。大阪の天神橋筋商店街の応援で、稼ぐことが目的ではなく、フリーペーパーを出してる感じの動画配信です。一方講演は少なくなりましたけども、Zoomとかでやるオンラインの会には呼ばれてますよ。

    望月

    なるほど。いろんなことでオンラインが増えたり、この状況で、大阪にいてはることも多いと思うんですが、竹中さん的には今の状況はどうなんですか? 何か動き飛び回っているときと、今だったら今のほうが意外と楽だったりするんですか?

    竹中

    飛び回る移動の時間は、今考えると大きかったですよね。飛行機で往復すれば片道約小1時間かかるし、前後の移動入れると1〜2時間は掛かるじゃないですか。新幹線に乗ったら3〜4時間。1日の往復はあまりしないですが、移動がなくなった意味では、だいぶ時間の使い方が変わりましたね。毎日ヒマですもん(笑)。風呂をちゃんとためてバスクリンを入れ、風呂の中でKindle Paperwhiteをゆっくり読もかってなりましたもん。

    望月

    (笑)

    竹中

    それと僕がワタナベエンターテインメントの仕事(顧問)も7月からやってるじゃないですか。ワタナベエンターテインメントは吉本ほど事件がないんで、ドタバタが少ないんですけど、今でもそうかもしれんけど、テレビ局とか芸能界ってリリースはFAXが多いんですよ。

    望月

    そうですね。

    竹中

    ワタナベエンターテインメントのケースでいうと、例えば週刊誌が金曜日に質問状を送ってきて、締め切りが月曜の朝やったりすると、日曜日に返答がほしいケースとかあるんですよ。それをどないしてるかって言ったら、これまでは「ちょっと待ってください。明日の朝、会社にでもFAXを取りに行きますから」みたいなことをしてるわけですよ。その記者さんに、「ワタナベエンターテインメントはこれからメールにするんでどうですか」と言ったら、もう全員大喜びですよ。

    望月

    そうなりますよね。

    竹中

    僕が言うまでは「誰かが会社に取りに行くから竹中さん待っててください」と言ってたんですよ。じゃあその後FAXをみんなへ送ってもらえと言ったら、家にFAXない人もおるじゃないですか。だからぶっちゃけて「もうメールにしてよ」と。それなら金曜日にもらっても土曜日にもらっても、日曜日の例えば5時には返すと約束できる。もうメールにしてと言ったところから、急に業界塗り変わり始めましたよ。「メールで済むようになったで!」みたいな。僕らもFAXもらったら、マネージャーに送ったり、ものによったら社長や役員に転送して見といて欲しいものもあるじゃないですか。それが全部もう携帯で済むからね。

    望月

    よくハンコ廃止と言ってるじゃないですか。そういうのって行政だけじゃないとすごく思うんです。

    竹中

    多いですよ。民間はものすごくハンコ多いですよ。

    望月

    FAXにしても、不動産業界もFAXだったんで。

    竹中

    そうですよね。弁護士さんもまだ書いたものを渡すとかありますもんね。まだまだ電子サインで済まないところもあるんで、変わってええもんと変わったらあかんもんが単純にあるんでしょう。それでいうとマスコミのリリースや質問状の返答は、もちろん電話も混ざってきますが、FAXはだいぶ除外されていくと思います。

    もしくはよしんばあるとしたら、作った人がA4で書きはるから、それを添付でもらうみたいなレベルでね、FAXでのやり取りは芸能界からだんだんなくなる。「弊社所属のタレントの某が結婚しました。」なんていう手書きの文章も、FAXではなく、添付書類で済ませるし。

    望月

    そうですよね。今はスマホがあるんでね。メールでやり取りすれば、送った送ってない問題も起こらないし、FAXは届いてません問題もないじゃないですか。自宅のFAXの用紙が夜中になくなったなんて事もあったな。

    竹中

    そうなんですよ。だからものによったら「ある写真を入手したんですけど、これちょっと日付確認してください」と言われたら、「もう写真をメールで送ってくれ」で済むじゃないですか。いっぺんにマネージャーに送って「確認してくれるか」「はいよー」ですよね。

    望月

    記事のゲラが届いても、メールだったらすぐに転送できますもんね。

    竹中

    そう。だから週刊誌の早刷りの紙面も発売日の前日ぐらいに、回ってくるんですよ。その時点で”FAXのFAXみたいなもの”なんですよね。ただそれでも回り出したときにはメールで読める。だからこれを機会にPR会社も全部リリースがメールに変わってしまうと思うんですけどね

    望月

    FAXは確かにまだ多いんですよね。

    竹中

    だから週刊誌とか月刊誌でも、ニュースの売り込みが日に何十とか何百ぐらい来てたわけじゃないですか。それはそれでまたメールでまみれてしまうのは一緒なんです。でも紙で出来てメールで出来ないことは、今のところないはずなんで。ここら辺は一気に進んだ気がしますよね。

    望月

    何か意外な効用ですね。コロナ禍でFAXがいらなくなるのは。

    竹中

    そうですよ。FAXやっとなくなったってね。

    望月

    ほとんどベンチャーとかスタートアップの会社へ行ってもFAXなんてほぼ置いてないですからね。

    竹中

    もうそろそろFAXの送り方とか意味わからん人が出てくるでしょうね。

    望月

    むしろ今は、コンビニにFAXしてきますみたいなノリですよね。

    オンラインでの試行錯誤に触れてみて

    先月か先々月は、日本橋の三井不動産のオフィスビルに呼ばれました。向こうも8割くらい会社に通ってない人がおるんで、その会は「見たい人だけ見なさい」みたいなことだったんですが。

    望月

    はい。

    竹中

    ビルには庭園みたいなフロアがあって、そこでみんな適当に弁当食ったり、PC持って仕事をしたりで、その場所を使って1時間弱ぐらい謝罪力や危機管理の話をしゃべらせてもらって、何百人もオンラインでつながってました。ソニーでも同じようなことをやりました。ソニーの品川本社も9割ぐらい出社してないから、ぜひやってと言われて。依頼が総務の仕事やったんで、人材育成の話題をしたら、テーマが「オンライン時代の雑談力」になった。夕方の開催だったんで100人ぐらいつながると言われていたら、結局約800人つながってました。

    望月

    (笑)

    竹中

    たまたまソニーピクチャーズの社長が、「忙しいけどつけといたら、聴いてておもろかったから最後まで聞いてもうたわ」と言ってはりましたね。だからオンラインでやってるものは、見てなあかんこともないじゃないですか。そういう意味では画像はあるんでしょうけど、なくても音がしっかりあれば、場が持つところがありますね。

    望月

    そうですね。だから配信は絵よりも音声ですね。

    竹中

    音声も捨てたもんじゃない気がするんで、ちょっと何かやりたいなって思います。うちの会社のホームページのデザインを変えた記念に、謝罪についてのブログは日に1本くらいはやろうかなと思ってます。それに合わせて週1ぐらいはstand.fmなんかで、謝罪を喋るコンテンツを蓄積していく準備を年内して、年明けからやろうかなと思ってるんですけどね。

    望月

    今の状況は、結局この前取材した6月ぐらいから、あんまり状況変わってないですよね。

    竹中

    そうですよね。周りの人がZOOMで研修を受けたり、チャットで書いてきたコトに対応するみたいな。今までできそうでやってなかったコトをする機会が増えましたよね。

    望月

    なるほど、そうですね。

    竹中

    大阪労働協会という一般財団法人があって、秋にはもともと企業と求人者を引っつけるマッチングイベントをやっていたんです。でも今年はもう全部できなくなったんでオンラインになったんですね。その中で文化祭みたいなことをしたかったんで、その「オンライン文化祭」の制作は全部ワタナベエンターテインメントに振ったんですよ。

    東大のクイズで有名な井澤くんが所属しているんで、他の文化人に仕事を決めるポイントってどんなことでした? など聞いてまわって、オンライン上の文化祭をうまくやれた。それ以外では登録すれば誰でも見れるコンテンツなんですけど、1時間ぐらい「オンライン時代の採用」について、総務や人事の人が聴きはるところで、僕が動画に出ました。総務や人事の人らは、いまオンライン時代の面接官もせなあかんから、そのコツや悩みを聞く、そんな授業を述べ4回やりました。

    望月

    オンラインにかこつけたものは、以前よりも需要がありますよね。

    竹中

    ありますよね。ただいくつか「オンライン面接」と言う言葉を調べると急に話し方学校の先生が出てきて、それこそメイクの仕方やカメラの目線の使い方とか、そんなことばかり教えている。肝心要な進行だとか雑談、インタビュー力みたいなことは全然誰も教えてくれてない。

    だからもう一回僕が面接官になろうと。それで面接官をする側のみんなが面接を受けなさいって。逆にそれが終わったら今度は僕が求人者側になるから、みんなが僕を面接してくれみたいなトレーニングをしませんかっていうのを声掛けしたら、わりとやりたいみたいな評判ありましたよ。これ新しいビジネスになるかもね。

    会社の総務の人は場合によっては、面接の練習したことないまんま任されるんですよね。他の人は「俺関係ないし」みたいなところがあって。でも会社によったら歴代の人事総務の人で、採用担当の誰くんの時の離職率が何パーセントみたいなものは、すぐ数字が出るじゃないですか。

    そういうので離職率が全然少ない面接官のことを第一にしたり、その子が別の若手の面接官を育てることをやってる会社もあるみたいです。そこまでいかないところは適当に総務部長が、「俺忙しいからやっといって」みたいことを急に言われて、入社2〜3年目の子が面接やってるようやね。結局面接というより、パンフレットの説明で終わってるみたいな感じやから、求職者もこれで採用されてもこんな人にって残ったまま、うやむやとして終わるらしいですよ。

    本来採用は企業の一番大事な取っかかりじゃないですか。そこに思った以上に力を入れていないというか、オンライン時代にまだ注ぎ込めてないのが悩みみたいですね。

    オンラインで本当に求められているのは雑談力?

    望月

    普通に対面の会議でも雑談をすることがなかった人は辛いでしょうね。

    竹中

    そうなんですよ。だからボクは会議の始まる前からそこに入り込んで、一人見つけて誰かと喋ってるんですよね。別に会議が始まる前にそれを見ている人がいてもいいじゃないですか。今のZoomみたいに時間が来ないと始まらないんじゃなくて、10〜15分前から早よ部屋に来て、コーヒー飲みながらぐだ話したらいいじゃないですか。そういうのりしろを作ることによって、温まったりして会議が始まるんちゃうかな。

    今日もそうですけど、時間決めたらそこまでオンラインだと繋がないじゃないですか。15分半前につなごうかと言ったら、じゃあ15分前に会議時間を決めておいてとなるんでね。そういうときには例えば11時に決めるんやったら、もう10時くらいからオンライン上のサロンは開いとると。ほんで誰かおしゃべり好きなやつが誰か1人つかまえて何か話しかけてるとかね。どんな雑談でもいいんですよ。そんな雑談タイムを設定できる機能をZoomに入れてほしいわ。

    それを他の人は見聞きしているようなことで、口出す人もいるし、ほっとく人もいる。時間が来て会議始めますとなると、ちょっと感じ変わると思うんですよ。その幅が今はないし、、特にZoomだと予約を入れた時間しか繋がってこないからね。

    望月

    そうですね。

    竹中

    もっと言ったらZoomはきっちりできるんで、話の途中でもタイマー終わったら切れて次の会議に行かされるわけじゃないですか。僕らがいかにもZoomに時間を仕切られてるんですよ。そこを仕切り直すことをもう少しうまく作って、ただ会議の前とか後にちょっと雑談できたりる立ち話できるようなことが、会議システムの前か後にあるといいなと僕は思う。

    望月

    だから基本的にオンライン会議ツールも、目的だけで使うツールになってますからね。

    竹中

    そうですよね。特に若い人たちって結論から聞きたがるじゃないですか。「映画見てん」と言ったら「どんな映画ですか。おもろいですか竹中さん」と言うから、オモロイかオモロないかは、おまえが観て決めろって言うのに、「竹中さんが面白かったかどうかを教えてください」と聞かれるんでね。映画ってそういうもんじゃないって話をせなあかん。最近ZOOMの会議では結論を急ぐ感じもしますね。議論が出来るような気はしているんですが、議論とは違って確認ごとばかり。慣れてないのもありますよね。これってyoutube見ながら画面を送ったり戻したり、最後の場面を最初に見てみたり。そんな癖がそうさせたのかもしれんねぇ。

    望月

    オンラインの会議だと空気感が伝わりづらいんで。

    竹中

    そうなんですよ。だからいい意味で全員が並列な感じがする。それがゆえに司会の人はじゃあ端っこの人から順番に意見を言ってみたいになってるんで、会話が交差しないんですね。聞き手に向かって1人ずつが言っていくみたいな感じ。リアル会議でも良くない会社の会議って、社長にしかしゃべらないですよ。社長が次の人は何かないかって当てると、また次の人も社長にだけしゃべるみたいなね。全然横とかに話が広がらないんですよ。今のオンラインでの会議もそんな気がしますね。

    変な話、会議室でやってる会議は、声がでかいやつが勝ったりするよね。それはそれで良いとは思わない。どうも今のオンラインは「はい端から順にどうぞ」みたいな感じやし。なんなら120秒しゃべったらチーンとなるから、「ゲームやないねんから」ってなる。これがもう少し空気感があったり、人間味みたいなことがうまく反映できたらもっと会議の質が良くなるんですけどね。

    はじまって、半年が経過しました。

    Profile

    竹中功

    1959年大阪市生まれ。同志社大学法学部法律学科卒業、同志社大学大学院総合政策科学研究科修士課程修了。
    吉本興業株式会社では宣伝広報室を設立、「マンスリーよしもと」初代編集長、芸人養成所「よしもとNSC」設立。その後、劇場やイベント、映画製作、町おこしなどに携わる。
    現在は作家活動に加え、ビジネス人材の育成や広報、危機管理、コミュニケーションなどに関するコンサルタントや刑務所での改善指導を行う
    株式会社モダンボーイズ