【レポート】Basic Insight Vol.2「いま」あらためて僕らの解像度を上げ、「街」を歩くことを考えてみる

望月大作
まえとあと 編集人

まえとあとのオンラインイベント「Basic Insight」の2回目は鼎談でした。

Profile

望月大作
同志社大学大学院修了。修士論文のテーマは「ガンダム」。さまざまな企業に勤める傍ら、十数年前にソーシャル系大学、「ツブヤ大学」を立ち上げる。直近ではWebメディア「十中八九」の編集長を退任後、Webマガジン「まえとあと」を立ち上げ、編集人となる。所持する資格は車の免許以外に、漢字能力検定2級/歴史能力検定世界史2級/知識検定1級。

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オンライン初の鼎談イベント

グラフィックレポート:田中 圭子 @sappa_kt

まえとあとのオンラインイベント「Basic Insight」の2回目は鼎談でした。

4月からはじめたまえとあとのオンラインイベント「Basic Insight」。初回は対談でしたが、2回目となる今回は鼎談でおこないました。

鼎談をしてくださったのは、それぞれバックグラウンドが異なる「街」のプロ。東京スリバチ学会会長の皆川典久さん。散歩の達人 編集人 / さんたつ編集長の武田憲人さん。そしてメトロミニッツ編集長の古川誠さんの3人。

この3名にはまえとあとの鼎談記事でも登場していただいており、何度も3人でお話していただいたこともあるので、その力量はもう何も心配しなくていいぐらいなんです。でも今回はこれまでと異なるオンラインでのイベントなので、ひとまず始まってみないと分からないこともありましたが、終わってみれば非常に内容の濃いオンラインイベントになりました。

リアルでのイベントとは違い、オンラインのイベントは集客が最後まで読めません。なぜならギリギリまで判断が出来るからです。前回も直前に伸びるという話を聞いていましたが、本当に今回は最後の最後まで参加者が増えました。つまり逆を言えば、最後まで諦めずにやることが大事なわけです。かなり当たり前な話を書いていますね(笑)。

さて本題に入っていきます。今回のオンラインイベントのテーマは「街」です。

まず簡単に自己紹介をしていただいたあと、メインの話に入っていきました。この鼎談では基本的に皆川さんを中心にしてお話いただいております。

迷わない男と迷う男たち

雨男だと自認する皆川さんは弁財天ファンクラブなるものもやっているそうです。いきなり特濃な皆川さんのプレゼンからトークセッションはスタート。最近皆川さんは地元のローカルな商店街に注目されているそうで、ローカルな商店街もたとえば中目黒は谷間にあるそうです。他にも板橋宿や西荻に川越、太子堂中央街@三軒茶屋やおおもん商店街@北千住などを紹介されました。

古川さんはメトロミニッツで特集した皆川さんとの四谷の街歩きの話から。四谷の荒木町あたりはパーフェクトな窪地らしい。つまり見事なスリバチ地形な場所。

その後、皆川さんが突如発した「ふたりは方向音痴じゃないですか?」という話から、武田さん曰く「皆川さんはどこにいても必ず北が分かる」と発言すると、「えっ、分からないですか?」と皆川さんが返す展開になった。

しかし武田さんも古川さんも、さすがに初めて降り立った街なかでどこが北なのかは、まったく分からない。皆川さんの話では、街なかで北が分かるとまったく迷わないんだそうだ。古川さんは逆に迷うことも多いらしい。しかも古川さんも武田さんも地図を見たら負けた気分になるらしい(笑)しかし、それはそれで逆に古川さんや武田さんは迷った末に新たな発見を見つける楽しみもあるようでした。

武田さんからは発売された「散歩の達人」の特集の話から紹介。「ご近所散歩」の特集は各所で評判が良かったそうです。たとえば街にある「よき文字」つまり街にある面白いフォントについてまとめたり、街にある「珍樹」(動物など何かに見える木)をまとめたり。「珍樹」のなかで武田さんが一番笑ったのは、漫画タッチに出てくるヒロイン「朝倉南」に見える木だったそうです(笑)。

他に個人的に面白そうだったのは、電線愛好家の話。俳優の石山蓮華さんは電線愛好家だそうで、彼女自身が撮影した電線コレクションには興味を持つことができた。いろんな愛好家がいるもんです。

古川さんはいま古道を歩くことにハマっていて、暇を見つけては街道を歩いているそうですが、今度古道を通って大山詣に挑戦したいと語っていた。

そんな古道の話が出た流れで、現在は東京版が絶賛発売されている凸凹地図の神奈川版も発売される予定にあることが皆川さんから発表された。

3人がいま注目していること

注目している街について話すブロックに突入し、今度は武田さんからのターン。次回の「散歩の達人」の特集から赤羽と北千住を注目している街に挙げていただいた。赤羽は赤羽を舞台にしたマンガで話題の清野とおるさんと一緒に街歩きをした話題だったり、団地の話題(ヌーヴェル赤羽台)を中心に。北千住も団地(日の出町団地)があるということで、対決形式でそれぞれの街を対比していました。

北千住の話題ではセンジュ出版吉満さんの話題も登場。古川さんの友人でもあり、そして古川さんの小説の話題にも。吉満さんが北千住に来て北千住の露出が増えてきたんじゃないかと話が盛り上がる。

次に古川さんのターン。

古川さんは注目している街として水道橋〜神保町界隈をまず挙げた。もともとカレー好きの古川さんは水道橋にある「カレー&オリエンタルバル 桃の実 水道橋店」のカレーがメチャメチャ美味くておすすめだそうです! イーストトーキョーが熱いと言われるなかで、神保町の三省堂本店を中心に神保町という街を3周回って熱い街として見直していくそうです。

水道橋に置いていた個人事務所を引っ越す古川さん。引越し先が、注目している街の2つ目

である鳥越です。古川さん自身がネクストブレイクに挙げている街でもあります。レベルの高いお店も多く他の場所から移転されてきているそうです。この流れについて、いままでイーストトーキョーで文化を牽引していた街から、周縁へ文化が拡がっていることを実感されてました。

そしてこのブロック最後は皆川さん。

皆川さんは場所というよりも、高低差などに注目をしているということで、高低差のある場所は歩くことでシークエンスが変わり、表情の街が楽しめるらしいです。たしかに言わんとすることは非常によく分かります。高さが変われば見えてくる街の見え方も変わってきます。そして地形の延長線上で施設を成り立たせる面白さが高低差のある場所ではあると。

たとえば「京橋エドグラン」の階段。コンサートを行うなど階段をうまく利用出来ているそうです。用賀の駅前にある階段も秀逸だと例に挙げていただきました。もっと階段を活用する可能性があると語る皆川さん、そのなかで建築をやる人は階段に憧れがあるんだそうです。それについてはライブ配信中のコメントにもありました。建築家は階段を作ってひとが佇む光景を夢見ているらしいです。そして階段には、そそるものがあるんだそうです。なぜかみんな階段に集まるし、階段は道にあるのに座りやすい。そして視線の交錯が適度でいい距離感を作りやすいんだそうです。

古川さんは話の流れから、街づくりと建物づくりをどうクロスさせていけるか、その可能性に言及します。街に人が滞留する仕掛けを企画すること。たとえば喫茶ランドリーなどを手掛けるグランドレベルの田中元子さんたちみたく街にベンチを置いたり、皆川さんもキッチンカーがあるだけで風景が変わると言います。

再開発がクローズアップされますが、でも新しい街を作るんじゃなくて、企画をうまく挟むだけでだいぶ変わると言います。皆川さんも「がむしゃらに開発するような都市開発じゃなくて、どうやったらあるものを活かしていくのかが街づくりには大切だ」と。つまり街づくりを楽しむスタンスが今後は大事になってくるはずです。

そういう意味では無駄と思えるところに踏み外すこと、わざと脇道にそれるこおt、敢えて迷ってみることが大事な要素かも、ということで何だか最初の話につながってきます。

古川さんとローカル

古川さんはローカルとの関係性について、日本中に面白いものがいっぱいあるというなかで、地方には選択肢が少ないと言います。でもそれは逆に豊かだと感じるんだそうです。その意味するところは、選ぶ選択肢が少ないと、そこにしかないので同じところに通うことになります。そうすると結果的に通うことでその場所と関係性が作れるわけです。

その関係性については地方から学ぶことが大きいと言います。古川さん曰く「同じところに何度も行くとか、知り合いを作ることはこれからの東京の住み方にもリンクしてくる。新しいお店に行くよりも行きつけを作るほうが豊かなんじゃないか」とローカルとの関わりについて述べます。

ローカルで一番好きな場所が高知な古川さんですが、今回推してくれた場所は長野でした。「長野はインディペンデントな感じが面白い。エリアエリアが立っている。それぞれ文化圏がある」と。いろんな地方が集まって出来ている分、長野の各文化圏の文化が尖っているようだ。

東京から出ていく人が入ってくる人を上回るようになった昨今、みんな2拠点の場所を探しているんだそうです。だから関係人口をいま作れている地方が強いと。ソトコト編集長の指出さんが作った「関係人口」という言葉が本当に秀逸だとも。

古川さんは、”これから繰り返し行く場所を作ること、それが新しい旅のスタイルだ”と言います。それはこの状況もあって、受け入れ側も一見さんよりも関係性がすでにある人に来てほしいと願うのはある種当然です。

そして「居心地良く生きていくには、自分たちでそういう関係を作る努力が必要でメディアもお手伝い出来れば、役に立つことが出来ると思う」と。

そして最後は皆さんが今後やりたいことを語ってくれました。古川さんはメトロミニッツとしてお店。ローカルの面白いものを集めているので、刹那的に流れず、ストックして触ってもらったり買ってもらったり出来るメトロミニッツの目利きの品が集まる場所+メトロミニッツの編集部の機能もついたような場所をイーストトーキョーの静かなところでやりたいそうです。いい物件あればご一報を!

皆川さんはどんどん東京の水辺を変えていくことに注力されているそうで、もしかしたら玉川上水の水を皇居のお堀に運ぶことで、お堀の水をきれいにする=泳げるようになるみたいなことに関わっているそうです。これは大阪の道頓堀がきれいになるぐらいの夢のある話ですよね。武田さんは商店街だったり街を元気にするような取り組みが何か出来ないかと模索しているということでした。

今回のレポートはここまでとなります。ご覧いただきありがとうございました。

そして、まだどの程度需要があるのか手探りではありますが、今回の本編アーカイブ動画と特典PDFをそれぞれ個別で販売いたします。もしご興味ある方がいれば購入を検討ください。(ライブ配信で参加され、アーカイブも見たいという方は、別途ご連絡ください)

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次回5/27(木)の、Vol.3 コミュニケーションマスターと謝罪マスターの邂逅

にもご期待ください。

Grafic report:Keiko Tanaka @sappa_kt
Edit & Text:Daisaku Mochizuki