あらすじ
大学四年の春。山下恵理は、就職活動のさなかで教師になる夢をあきらめかけていた。
二歳のとき、父と兄は家を出ていった。恵理は父の顔をほとんど憶えていない。母と妹との三人暮らしが、彼女にとっての当たり前だった。
物語は高校時代へ遡る。三年間クラス委員を務めた恵理は、無愛想で口の悪い世界史教師・山崎徹と関わるようになる。歴史は勝者が書いたものにすぎない。この世界は、精度の高い夢のようなものだ。夢はひとつではなく、たくさん持つべきだ──型破りな授業と、放課後の対話は、恵理の視野を少しずつ広げていく。
やがて山崎は、理由を告げないまま転任していく。
そして大学四年になった恵理は、二十年ぶりに兄と再会する。忘れていたはずの父の記憶が、少しずつ形を取り戻していく。
2005年の日本を舞台にした、父と娘の物語。
